過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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631: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2015/12/08(火) 23:51:02.10 ID:/xl71SIm0
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「ヒノカさん、どうして僕を牢から出すんですか?」

 後ろから付いてくるカムイが、私にそう尋ねる。ヒノカさんという他人行儀な言葉も、今では気にすることもない。むしろ、それは私にとって今は幸福に近かった。
 名前を呼んでくれるということだけでも、長い期間叶わなかったことだったのだと考えれば、姉と呼ばれないことに諦めがついたのだから。

「なに、いつも牢ばかりにいては体に毒だからな。リョウマ兄様にも許可は頂いている、大丈夫、今から向かうのは私の部屋だ。私とお前以外誰もいない」
「ヒノカさんの部屋? 僕のような捕虜が入っていい場所じゃないはずですよ」
「いや、私はお前のことを捕虜だなんて思っていない。白夜に連れ戻すことを目的としてきた私が、カムイのことを罪人のように扱うことはない。だから安心してくれ」

 暗夜で目を失ったカムイの手を静かに握る。実際、こんなことをしなくても、カムイならこのような廊下で躓くこともないだろうが、私はあえて手を取った。
 カムイの手から伝わる温かさ、眼の前にいるものが本物だと確認する度に心が温かくなっていくのがわかる。私の努力が報われた形の一つはこれだった。

「優しいんですね、ヒノカさんは」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。さぁ、ここが私の部屋だ」

 静かに戸をあける。中は奇麗に片付けておいたから、あるのは数少ない机や寝具だけの、なんとも殺風景な場所。カムイも中に入って気配で確認したのか「女性の部屋というよりは、なんだか男性の部屋って感じですね」と零す。
 あの日、私は武人として歩み始めたのだからその認識で間違いはなかった。この部屋はあの日から、ずっとこのような殺風景な場所だった。
 女性としてのイロハなんてものは、とうの昔に捨て去っているのだから。


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