過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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756: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2015/12/24(木) 20:52:17.82 ID:l3VnDCHF0
◇◇◇◆◆◆











「ピエリさん、今日のパーティー楽しみにしてますから、私は大丈夫です。その、後日に改めてピエリさんに誕生日プレゼントを手渡しますから。だから、みなさんは私のことを気にしないで、行ってください」
「リリスさん……」
「カムイ様、ピエリさんにはよろしく伝えておいてください。ふふっ、明日からはいつも通りのお仕事ですから、私、早く治しちゃいます。ゴホッ、ゴホッ。それに皆さんが会場に行っているなら、風邪を移す心配もありません、今日はゆっくり休んでますから」

 リリスは皆に行くようにとの一点張りを続け、最初カムイも残ると告げていたのだが、やがて押し切られる形で、四人は会場に行くことを承諾した。そして、出発を告げる言葉を受けて、扉が閉じられて、リリスは一人になった。

「……」

 誰もいなくなった部屋の中、夜の間に良く見上げる天井が明るい事がこの上なく寂しく感じて、口元まで布団を被る。息が掛かる音と、時折外から聞こえる枯れ木の揺れと、鳥の憂鬱な鳴き声は、部屋の中にある静寂の存在感を押し広げていく。その静寂から視線を逸らすように机に目を向ければ、綺麗にラッピングされた包みが鎮座している。本当ならピエリの屋敷に向けて進んでいたはずであろう包み、一生懸命考えて選んだプレゼントの入った包み。

「……最悪です」

 一番渡すべき日に、それを渡せないことが何とも歯痒く、プレゼントから視線を逸らしたい一心で頭まで布団を被る。真っ暗な世界の中に入ると、妙に落ち着けるのは、何も見えないからでもあった。そこに見慣れた世界があって、誰もいないことを認識するよりかは、暗い世界の方が幾分か気は楽になる。

「………寂しい」

 しかし、口は正直だった。
 その思いをどうにか封じ込めるように、リリスは目を閉じる。熱で混乱する頭はいろいろなことを引きずり出してくる。そして、今日がピエリの誕生日であるからか、思い出すのはピエリの事ばかりだ。

(……私と、ピエリさんが初めて出会ったのは……たしか、ミューズ公国で透魔兵が暴れているのを止めに行った時でしたね……)

 その時、まだ二人は友人ではなかったし、味方でもなかった。ピエリはラズワルドと一緒にカムイを捕らえに来ていた立場で、最初に対峙したとき、ピエリの刃はリリスの命を刈り取るために振るわれていた。二人がマークスから受けていた命令は、カムイを取り戻すことであり、その他の命に関しては何も触れていなかった。ラズワルドはできる限り人命を優先するが、ピエリはその範疇ではなかったから、対峙した際には文字通り殺すつもりで刃を振るっていたのである。

(……ふふっ。みんなにはおかしい話って言われちゃうかもしれません……ね)

 今とは全く異なる昔のことを思い出しながら、リリスの意識は静かに消えていく。そして手繰り寄せるように、初めて出会った時のことを夢に見た。



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