過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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758: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2015/12/24(木) 20:59:05.51 ID:l3VnDCHF0
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「ふぇ、ふぇえええん」
「大丈夫、大丈夫ですから……。泣かないでください、ね?」

 子供をあやすようにリリスの手は優しくピエリの頭を撫でる。お気に入りのリボンも含めて、優しく触れた手がピエリの不安を見事に和らげているようだった。

「ひっ、ううっ、ぴ、ピエリ、痛いの嫌いなの」
「大丈夫です。もうそろそろ傷口が塞がりますから、安心してください」

 何度も入念に術を掛けて、治療を終える頃にはピエリの嗚咽は無くなって、むしろ敵である自分にここまで尽くしてくれるリリスに不思議な視線を向けていた。リリスから感じる壁の無い感じが、妙にしっくりとくる。だから、自然と言葉を紡いでしまう。

「ねぇ、なんで、ピエリを助けたの。ピエリ、あなたのこといっぱい攻撃したのよ?」
「カムイ様がそう望まれたからです、それ以外に理由なんてありませんよ。もしも言われなかったら放っておいたと思いますから」

 この頃のリリスからすればピエリもどうでもいい人間の一人と言えた。カムイからの命令、そして生存を最優先しているリリスにとっては、ピエリは命令の中で救わなければならない命であって、そこに個人的に思うことなどなかったのだから。そんな融通の利かない発言だったからなのか、それともピエリと同じように遠慮の要らないその言い方が良かったのか。

「……ピエリ」
「?」
「ピエリはピエリっていうの、あなたはなんていう名前なの、教えてほしいのよ」

 自然と名前を求めていた。考えたわけでもなく、かといって知りたいと思ったわけでもなく、ただ自然とそう言葉が綴られて、それにリリスは訝しい顔をしながら答えて名前を返す。
 リリスという名前、カムイに仕える臣下の名前、ただそれだけの意味だけしかないはずの名前だった。生きながらえた命をカムイのためだけに費やすことを選んだ人生の中で、それ以上の意味が含まれることなどあり得ない、そう思っていたのだから。

「ピエリ、リリスの事気に入ったの。今度会った時も殺さないであげるの!」
「なんですかそれ。私は殺す価値がないって、そういう意味ですか?」
「気に入ったからなの。だからリリスは特別に殺さないのよ」

 無邪気にそう告げるピエリの姿に、当初リリスは混乱していた。混乱して、でもどこかその言葉に心地よさに似たものを覚えていた。特別という言葉は、なんだかとても新鮮なもので、リリスはこういう時にどういう顔をすればいいのかよく理解できていなかった。笑えばいいのか、困った顔をすればいいのか、どういう顔をすればこの問い掛けの答えになるのかが、全くわからずじまい。しまいには色々と顔を作って、それを見ていたピエリに笑われる始末だった。


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