過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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759: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2015/12/24(木) 21:01:58.05 ID:l3VnDCHF0
◇◇◇◆◆◆











「ふふ、リリス、なんだか変な顔してるの。笑ったり渋い顔したり、見てて面白いのー」
「……その、特別ってどういう意味なのか、分からなくて……」
「特別、リリスには難しかったの?」

 ピエリの問い掛けの答えはYESだった。仕事と考えれば人々との繋がりに理由を付けられるリリスであったが、こうやって今現在の接点が命令の延長線上であるピエリとの関係性、これを説明できる言葉が見当たらないのだ。

「はい、私には難しいです。だって、ピエリさんとは今初めて会ったばかりですし、それに味方じゃありませんから」
「そうなの? なら簡単に言うの、ピエリ、リリスと友達になりたいのよ」

 リリスの胸の中に一瞬だけ、暖かい何かが生まれたのは多分この時だった。

「友達……ですか? もしかして、傷を治してもらったからとか――」
「ちがうの。ピエリはリリスの考え方とかとっても気に入ったのよ。だから友達なの」
「まだ出会って一日も経ってないのに」
「ピエリが気に入ったからいいの。リリス、ピエリと友達になりたくないの? そんなのひどいの、ふぇっ、ふぇえええ……」
「いえ、そういうわけじゃなくてですね。……私、よくわからないんです」
「なら、教えてあげるの!」
「わわっ、手をいきなり取らないで……」

 一方的に言葉をピエリは繋げて、無理やり手を引っ張る。
 リリスの体は振り回されるままに、ぶらぶらと揺れるが、その視線は目の前で歯を見せて笑うピエリばかりを捉えて離さなかった。

「一緒にお料理作ったり、好きなことを教えあったり、一緒にお出かけしたりするの。ピエリとリリスで今度お出掛けするの」
「無理ですよ。私たち、敵同士じゃないですか」
「あっ、そうだったの……。リリスだけピエリと一緒に来るの。それなら、今度お出掛けできるの」
「それはできません。カムイ様に付き添うのが私の役目ですから」
「うー、融通利かないの」

 リリスの言葉に唇を尖らせる姿は、どちらかというと思う通りにいかないことに悪態を吐く子供のようだけど、その握りしめられた手から感じる温もりは確かなものだった。
今まで感じたことのない暖かいもの、カムイに握りしめられたものとは違う、形は違うけど大切なものだと思える、そういうものだった。だからかもしれない、握られた手をさらに握り返すように、リリスの手に力が籠る。

「でも、その、もしも、敵同士じゃなくなったら、連れて行ってくれますか?」

 それはリリスにとって初めて口にした言葉だった。
 もしも心に感じる物がなかったのなら、ここで握られた手はすぐに解かれ、こんな約束もなかったことだろう。
 そんなやんわりとした絆の思い出が次第に眩んでくる。

「ふふっ、リリス。少し恥ずかしそうなの」
「そ、そんなことないです」
『リリス……顔赤いの』

 顔に触れる冷たくもひんやりした感触が、彼女の意識から懐かしい光景を静かに消し去って――



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