過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
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762: ◆P2J2qxwRPm2A[saga]
2015/12/24(木) 21:17:04.78 ID:l3VnDCHF0
◇◇◇◆◆◆














 ベッドに腰を下ろして、ピエリの手がリリスの手を包み込む。窓から差し込む赤い光が、だんだんと弱くなっているのがわかった。

「……リリス。ごめんなの」
「なんで謝るんですか?」
「ピエリ、今は時間があるからここに来てるだけなの。もう少ししたら戻らないといけないのよ」

 ピエリはこれでも名門貴族である、夜から本格的に行われるパーティーを考えると、今ここに来ていることもかなりの無茶だとリリスは理解していた。夕刻の終わりは二人の静かな誕生日会の終わりを告げる者、時間を切り張りできるのなら、少しだけ巻き戻せればいいのにとリリスは心でごねるけど、もとはと言えば自身の体調管理の至らなさであるのだから、文句を言うのはお門違いだった。

「それじゃ……、早く戻らないといけませんね」

 絞り出すように現実を告げる。出会って初めての誕生日は、こんな形で終わってしまうのが、すごく悔しく感じた。

「リリス、すごく悲しそうな顔してるの」
「だって……本当はもっとお話ししたかったんですよ。プレゼントも、もっと違う雰囲気で渡したかったんですから……。最悪です」
「ピエリは最悪じゃないの。だって、こんなにリリスがピエリのこと思ってくれてるってわかったから」

 冷たい手が額に触れて、髪と一緒にリリスを撫でる。

「リリス、イイ子イイ子なの」
「私、全然いい子じゃありませんよ。誕生日の日に風邪引いちゃうような、そんな子なんですから」
「ううん、ピエリとってもうれしいの。夜まで作業してたってカムイ様から聞いたの。無理しすぎなの、どうして無理したのよ」
「その、ピエリさんは初めて、初めて出来た友達だから……」

 言葉に詰まる。胸がドキドキし出すともう止まらない。言葉をつなげようにも、どうすればいいかわからなくて、頭の中が真っ白い靄でいっぱいになっていく。

「そ、その……私が風邪を引いたのはピエリさんの所為だって思われたら、どうしようって。本当なら、こんなこと考えなくてもよかったはずなのに。ごめんなさい」
「ふふっ、嫌われちゃうかもってリリスが思ってくれて、ピエリとっても嬉しいの。だけど、体壊しちゃダメなの、次の誕生日は風邪引いちゃダメなのよ」
「ピエリさん……」

 握られた手の暖かさなのか、それともピエリの言葉が力になったのか。もしかしたら両方かもしれない。リリスの頭で沸々とできていた靄が、その姿を静かに消していく。代わりにあるのは暖かいものだ、初めてピエリに手を握ってもらえた時に感じた、確かな温かみ、それが心の中でふわふわと浮かび上がっていく。

「だから、ピエリ、リリスから受け取りたいの。リリスが準備してくれたプレゼント、受け取りたいのよ」
 先ほど手渡されたラッピングされた箱にリリスの視線が落ちた。
 今の間だけは頭の中はとてもすっきりしている、やることも分かっていた。ここを逃したら今日はもう動けない気がしていたこともあって、リリスの手はそれを両手に携える。

「ぴ、ピエリさん」

 一度間を置く。心臓が静かに鼓動を速めていく、恥ずかしさと嬉しさが混じった心境に、一滴だけ加える勇気はどちらにも力を与えてくれる。言葉と行動で紡いでいく。
 静かに差し出す。ラッピングがされたその箱、一生懸命選んで準備した中身、リリスにとって初めて友達に送るプレゼント。それは確かにリリスからピエリへと手渡された。

「お誕生日おめでとうございます」
「リリス、ありがとうなの、ピエリとっても嬉しいの!」








 ピエリリス誕生日番外 おわり


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