過去ログ - モバP「藤原肇と一緒にエレベーターに閉じ込められた」
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4: ◆agif0ROmyg[saga]
2015/10/16(金) 17:20:32.03 ID:zDmK2gQj0
 そして一時間が経った。

 エレベーターに動く気配は全くない。外からの連絡もない。

 ボタンも反応せず、どういう訳か携帯すら不通。

 マンション等に設置されているタイプのエレベーターなら天井の穴を通って外に出られるらしいが、あいにくそれらしい出口は見あたらなかった。

 出口があったところでエレベーターシャフト内に閉じこめられているという事実は変わらないし、上の階まで上っていくアテも無いのだが。

 最近めっきり涼しくなってきたとはいえ、昼間に日光降り注ぐ場所にとどまり続けているとなかなかに暑い。

 空調も機能していないのだろうか、吹き出し口からは弱々しい風が出てくるのみ。

 ひとまず窒息の危険は無さそうだという点を喜ぶほか無かった。

「いや、でも今の季節でよかったよ。真夏だったら、二人とも蒸し焼きになってるところだ」

「そうですね……それでも、かなり暑いですけれど……」

 突然の事故に、肇はかなり不安そうにしている。

 俺とてこんな状況は初めてで、上手い対処法も思いつかないが、とにかく少しでも彼女の不安を和らげたい。

 背中から包み込むようにぎゅっと抱きしめると、ちょっと申し訳なさそうな顔をした。

「すみません、甘えてしまって。……汗くさく、ないですか?」

「気にするな。肇の匂いは好きだ」

「も、もう! こんな時に……!」

 怒ったようなことを言いつつも、表情を緩めてくれた。

 まだ解決の見込みは立っていないが、まさかいつまでもこのままなはずはあるまい。

 だんだん気温の上がってくるエレベーター内で、それでも俺たちはお互い離れがたく思っていた。


 そして更に二時間後。

 未だに助けは来ないし、復旧の気配もない。

 肇を守ってやらねばならないはずの俺も、だんだん平静ではいられなくなってきている。

 顔を真っ青にして震え始めているアイドルがいなければ、取り乱して叫んでしまったかもしれない。

「すみません……私が、こんな……こんな日に、遊びに行きたいって言わなければ……」

「何言ってるんだ。肇のせいじゃないだろ」

「で、でも、今私たち、すごく高いところにいますよね……
 もし、エレベーターが支えられなくなって、下まで落ちたら……私たち……」

 肇の言葉に、二人ハッとさせられた。

 今はこうして安定しているようだが、既にかなりの長時間異常事態が続いている。

 恐らく安全設計として、電力供給が途絶えても落下しないような作りがなされているのだろうが、それにしたっていつまで保つものか。

 日常的に利用するエレベーターの構造をまるで把握していなかったという事実が、今更ながらに悔やまれる。

 慰めて否定してやりたくとも、そのための材料がないのだ。

「い、いや、大丈夫だろ……落ちるなら、最初に落ちてるはずだ。
 今こうしていられるってことは、まだまだ落ちないんじゃないか」

「それなら、いいですけど……でも」

「やめろ、肇。悪い方へ考えるな。
 必ず助けがくるはずだ。それまで持ちこたえるんだ」

 自分でも大袈裟なことを言ってしまったような気がしたが、いつまで経っても救助が来ないこと、それどころか通信も呼びかけもないことが不安をかき立てる。

 何度否定しようとしても、このまま落ちて死ぬんじゃないかという思いが頭を離れない。

 肇の汗ばんだ身体を抱きしめて、首筋に顔を埋めた。

「……やっぱり、結構……汗、かいちゃってますね」

「水、無いもんな……ちょっと何とかした方がいいか」

「なんとかって? ……あ」

 答えに思い至った肇は目を見開いた。


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