過去ログ - 千早「12色のクレパス」
1- 20
44:名無しNIPPER[saga]
2015/10/24(土) 16:26:54.50 ID:wlnW7ggg0
 プロデューサーが亡くなったのは、およそ一年半前。
 ステージの奈落へ転落したことによる、事故死でした。

 煌めく舞台裏、鬱々たる暗い底へ転落しそうになった春香を、助けようとしたためです。

 病院での手当の甲斐も虚しく、およそ数時間後の深夜、帰らぬ人となりました。
 脳挫傷、というのが直接の死因なのだそうです。


 霊安室にて、物言わぬプロデューサーと対面しては、皆一様に涙を流しました。

 喪に服すため、高木殿がしばらく、皆の仕事を取り止めることを決断します。
 家族同然の絆で結ばれた我々の中に、反対する者などいるはずがありません。

 一方で、小鳥嬢や律子嬢は、葬儀の事務処理に追われ、いつも忙しそうにしていました。
 真や伊織、亜美や真美などは、彼女達に食ってかかっていましたね。
 プロデューサーが死んで、なぜ平気な顔をして仕事ができるのか――悲しくないのかと。

 喪中は、何となしに事務所に来ていた者達の間で、度々そのような諍いもありました。
 その度に、三浦あずさや、萩原雪歩などが、場を収めていたように記憶しております。


 火葬、納骨が終わり――服喪期間が終わり――。
 私達が、いよいよ彼の死を本当の意味で受け止め始めたのは、仕事に復帰した頃でした。

 逆を言えば、それまで私達は、彼の死を受け止めきれていなかったのです。
 卑怯な言い方かも知れませんが――それは、仕方の無いことでした。
 プロデューサーと私達が最も密接に関わっていたのは、仕事の時だったのですから。

 彼や律子嬢に代わり、慣れない中での営業、仕事の獲得、調整、合間のレッスン――。
 精神的負担に加え、あの方の存在と、それを失った悲しみを思い知る日々が続きました。


 春香と、美希が限界を迎えるのに、そう長い時は必要としなかったのです。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
177Res/216.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice