53:名無しNIPPER[saga]
2015/10/24(土) 16:59:53.99 ID:wlnW7ggg0
私は、改めて、真っ暗な空に浮かぶ月を見上げました。
月は、自ら光輝いているのではない――。
私は、それに気づいていながら、気づかぬ振りをしていました。
私は、自身の進むべき道を確認するために、月を見ていたのではありません。
ただ、光を求めていたのです。
光を与えてくれる、誰かを――。
しかし私は、恐れていました。
誰かが与えてくれる光を、直視することを――。
暗い場所へ隠した、誰にも見せない弱い自分を暴かれることが怖くて――。
なればこそ、光源の見えぬ反射光を――月を見て、光を得た気になっていたのです。
ふぁんを喜ばせるためなどと、自分を偽り、ひた隠しておきながら――。
都合良く自身に届く慈しみのみを求める、卑怯な臆病者こそが、本当の私です。
人の愛を受け止めることができぬ者に、人を愛することなど、どうしてできましょう。
この期に及んで、アイドルと向き合う覚悟ができていないのは、私の方――。
そのことに気づかされた私は、その場に崩れ落ちました。
事務室に戻ると、響とやよい、真美が、私の下へ飛び込んで来ました。
彼女達は、冷たい態度を取ったはずの私を心配し、ずっと待ってくれていたのです。
小鳥嬢が温め直してくれた、ここあを持って。
ここあ以上に、皆の温もりがあまりに申し訳無く、有り難く――。
私は、こみ上げる思いを、堪えることができませんでした。
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