7:名無しNIPPER[saga]
2015/10/28(水) 01:07:18.20 ID:iHsws6qc0
榛名は書斎机の引き出しをダズル迷彩の艤装をバールのように用いてこじ開ける。ケッコンカッコカリの書類を取り出し、名前欄に「提督」と「榛名」と丁寧に綴る。印章が必要らしかったが、印鑑が見当たらないので、提督の親指を傷口に添えて血判させた。死人に意志はないので、榛名が全ての意志であった。
榛名は左手薬指にはめた指輪をうっとりと眺めた。婚約の証である指輪は榛名の方だけがつければ良い。鎮守府では重婚が認められていた。提督は何人も妾を持つことが許され、それが好ましいことだとさえされる一方で艦娘達は一途に操を立てなければならなかった。
提督と艦娘の関係は非対称的であり、それを「性的搾取」であると糾弾する社会運動もあったようだが、艦娘たる榛名にとっては提督と「常に一緒に」いるという日暮しであるのだから、「重婚は不誠実だ」と主張されても、己に関わる問題だという実感はありえなかった。
「現在の艦娘の待遇は奴隷的であり、彼女達の人権が保護されているとは言い難い」。どこの誰が言いだしたのか。少なくとも艦娘ではない。実際、艦娘達は「艦娘の社会的地位の向上を唱える運動」についての報道を「草原を跳ね回るうさぎに選挙権を与えるべきか否かの裁判」に関するのと同程度の物珍しさと無関心さで聞いていたのだった。
むしろ榛名にしてみれば、この非対称的な関係性こそ現状都合の良いものだった。なまじ対等な関係となると結婚するにしても「双方の合意」なんて面倒な手続きが必要となるが、提督と艦娘の関係ではそれは必ずしも必要ではなく、「一方の合意」、つまり提督が艦娘に命じるというだけで婚約は成立する。
今、榛名は指輪をはめている。この事実を第三者が説明しようとするなら、婚約の主導権は完全に提督側にあるのだから「提督が榛名に婚約を申し出た」と原因を措定しなければならない。この非対称的関係性ゆえに榛名は提督からプロポーズを受けたとみなして良いのだった。
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