過去ログ - 高森藍子「もういいかい」
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38:名無しNIPPER[saga]
2015/11/04(水) 23:19:26.82 ID:6LZx9kqto
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 「……すみません。やっぱりテレビ向きじゃないですね」

ちょっぴり悲しい、だけどとても大切な思い出。
これはカメラの前で披露するより、そっと胸に秘めておくべきなのかもしれません。

 「私はもう、その人の顔を覚えていなくて。記憶というのは、薄れてしまうもので。だから」

手の中にあったカメラを、そっと撫でました。

 「即物的かもしれませんけど……私は、何でも無い日を残したいんです」

 「…………」

 「お散歩していれば、また会えるかもしれませんしね。ふふっ」

 「…………」

 「もしいつか会えたら、写真を一枚だけ……Pさん?」

Pさんがいつものように顎へ手を添えて、でもいつもより真剣な目で何かを考えていました。
話し掛けるのも何だかためらわれて、何とはなしに窓の外を眺めます。
いつの間にか随分と低くなった太陽さんが、秋の東京を赤く照らしていました。


 「藍子」


Pさんが膝を叩いて、ソファーからゆっくりと立ち上がりました。



 「かくれんぼしようぜ」




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