193:名無しNIPPER[saga]
2015/11/26(木) 23:55:12.46 ID:KuRGWnJ0o
「そういうの、考えたことなかったんだ。いろんなこと、あって」
佐伯は、いつも、遠くを見ているような顔をしている。
彼女は俺を誰かに似ていると言っていたけど、俺に言わせれば、彼女のそういうところの方こそ、誰かに似ている。
目の前の何かではない、頭のなかの何かを見つめるようなその表情は、誰かに似ている。
「同じく」とつぶやくと、佐伯は「おそろいだね?」って誰かみたいに笑った。
それからぼんやりと、彼女は俺の知らないうたを口ずさんだ。
「トンネル抜ければ、そこはまた、大きな、トンネルのなか」
昼の太陽は俺たちの頭上で光を撒き散らしている。
屋上に届く音は何もかもが透明な膜越しに聞くように遠く感じる。
「そういや、高森がカラオケいきたいって。今日」
「わたしも?」
「行かない?」
「いいよ」
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