32:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:32:48.70 ID:0oXNO4iLo
  
 「……あの、すみませんでした」 
  
 「うん。許す」 
  
  にっこり笑いながら、部長は印刷ボタンをクリックした。 
  旧式のプリンターがガッコンガッコンと不穏な音を立てながらA4用紙を吐き出しはじめる。 
  負い目があるので止めようにも躊躇するが、高森と俺の名誉の為に、どこかの段階で阻止しなければならない。 
  
 「部長……あの、勘弁してください」 
  
 「『ことばが、こころを守る。』」 
  
 「マジで勘弁してください!」 
  
  彼女は俺の懇願を尻目に、鼻歌まじりに印刷を続ける。 
  
 「あとで職員室のコピー機で拡大印刷しようね?」 
  
 「……分かりました。好きにしてください」 
  
  お手上げのポーズをして、俺は溜め息をつく。 
  仕方ない。こうなったら、とりあえずは一旦引こう。 
  
  俺が抵抗をやめる素振りを見せると、案の定、部長はつまらなそうな顔をした。 
  おそらく、からかって面白がっているだけなのだ。 
  
  あとは部長が飽きたときに、あるいはパソコンから離れた隙に、データを消してしまえばいい。 
  印刷されてしまったものに関しては……部長の行動に注意を払っておけば、晒しものになることは避けられる、はず。 
  
 「……ふむ。思ったよりいい感じだね」 
  
  プリンターが吐き出したポスターの出来栄えに、部長は感心していた。 
  
  
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