過去ログ - 屋上に昇って
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53:名無しNIPPER[saga]
2015/11/15(日) 19:07:29.17 ID:ZQjZY+y8o



「時間は取り戻せません」と、去年の入学式の後、教卓に立っていた当時の担任は言った。

「どんなふうに過ごしていても時間は流れます。楽しくても苦しくても、何もかもが過ぎていきます。
 なにかのきっかけで大きく変化してしまうこともありますし、
 ちょっとした変化だったはずなのに、積み重なって大きく変わってしまっていたことに気付くこともあります。
 ごく当たり前のことです。仲の良かった人といつのまにか話しづらくなったり、
 以前は想像もしていなかったような相手と、気付いたら深く結びついていたりします」

 それでも時間は、すべて地続きになっています、と彼は話を続ける。

「ふとしたときに、ふるい友達のことを思い出して、懐かしくなったり、寂しくなったりします。
 以前とは大きく変わってしまっていることに不意に気付き、悲しくなったりします。
 大事だったもの、楽しかった繋がりが、いつのまにか失われていることに気付いて、耐えられなくなることもあります」

 彼はそこで笑った。

「年寄りのたわごとです。笑ってください。あなたたちはそれが許される年齢です」

 実際、何人かはバカにして笑った。

「覚えていてください。どんな人間も、突然大人になるわけでも、突然子供でなくなるわけでもありません。
 過去を現在から切り離すことは困難ですし、未来は現在の地続きにあります。
 地続きですが、それでも変化は必ず訪れます。
 変化が不可避なら、後悔も不可避です。あなたたちは、可能なかぎり現在に真摯に、誠実に生きてください」

 気付いたときに何もかも手のひらからこぼれ落ちている、そんなことにはどうかしないでください。
 
 そんな、それだけの言葉を、俺は不思議と覚えている。説教臭いって鼻で笑おうとしたのに。 
 



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