887:名無しNIPPER[saga]
2016/03/19(土) 00:02:15.12 ID:7uTUbjIMo
みんなが黙って、続きを待った。
「いつも、置いていかれるのを怖がってた。ひとりになるのを嫌がってた。いろんなことが変わってくのが、怖かったんだと思う」
静奈姉は。
どんな思いでこんな話を聞いているんだろう。
よくわからない。
ちい姉の語る遊馬兄は、俺の思っていた彼の姿と一致しない。
でも、
たしかにどこか、寂しそうだったような気もする。
「ちょっと、話してくれたことがあるんだよ。子供の頃から、美咲ちゃんの面倒見てたんだって」
「……うん」
静奈姉が頷いた。
「学校からすぐ帰って、おじさんとおばさんの代わりに家事をやって、美咲ちゃんの面倒ばかり見てた」
そこでちい姉は、少しだけ言葉を止めた。何かを迷うみたいに。
「子供の頃って、放課後毎日友達と遊んだりしたでしょ? 誰かの家にいったり、学校に残ったりして。
遊馬には、そういうのがなかったから……友達がいなかったわけじゃないけど、“仲の良い友達”はいなかったんだって」
爪弾きにされるわけじゃない。腫れ物みたいに扱われるわけじゃない。
距離を置かれるわけでも、避けられるわけでもない。
それでも、居場所のないような、疎外感。
誰かと誰かが、仲良くなって、ともだちになって、近付いていって、
それを眺めている誰かの、置いてけぼりの気持ち。
1002Res/782.99 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。