888:名無しNIPPER[saga]
2016/03/19(土) 00:02:47.70 ID:7uTUbjIMo
「小学生の男の子がさ、みんなが放課後に缶蹴りとかして、誰かの家に集まってゲームとかして、
そういうときに、家に帰って洗濯物を取り込んで、夕飯の買い物をして、準備をして、妹の勉強を見て……」
それって、どんな気持ちなんだろう、って、ときどき思うんだ。
「でも、遊馬は美咲ちゃんのことが大好きだから、きっとあの子の前では楽しそうに話をするんだよ。
学校でこんなことがあったとか、クラスの誰々がどうこうだとか、そういう話を。きっと、そういう癖がついてたんだよね」
両親は仕事で帰ってこなくて、甘えたり弱音を吐いたりしたいときがあったって、誰にも甘えられない。
それでも平気でいないと、妹が不安になるから。
「先輩の、両親って」
「遊馬は、そんなことないってずっと否定してたけど。忙しいだけって、ずっと言ってたけど。
たぶん、それは半分なんだと思う。いくら仕事が忙しいからって、子供をずっとほったらかしなんて、ありえないもん」
「……おじさんとおばさん、美咲ちゃんが高校に上がる年に、離婚しちゃったんだよね」
「うん。たぶん遊馬は繋ぎとめようとしたんだよ。それだってきっと、自分のためだけじゃないと思う」
「……美咲ちゃんのため?」
「美咲ちゃんの誕生日は、毎年必ず家族が全員揃うんだって、遊馬は言ってた。忙しくても、子供のことをちゃんと考えてくれてるって。
でも、遊馬の誕生日は揃わないんだ。それって、きっと、遊馬が頼んだんだよね」
せめて、と。
「本当のことは、わからないけど。でもきっと、遊馬は寂しがり屋で、甘え下手で、つよがりだったんだと思う。
……たぶん、だからだと思うんだ」
「だから、って?」
すず姉の問いかけに、ちい姉は言葉を探るような沈黙を置いたあと、返事をする。
「寂しそうだったから、好きになったんだと思う」
そんな、堂々とした言葉に、みんな口ごもる。
「……なんか照れるね」と、静奈姉が笑う。
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