過去ログ - 屋上に昇って
1- 20
888:名無しNIPPER[saga]
2016/03/19(土) 00:02:47.70 ID:7uTUbjIMo

「小学生の男の子がさ、みんなが放課後に缶蹴りとかして、誰かの家に集まってゲームとかして、
 そういうときに、家に帰って洗濯物を取り込んで、夕飯の買い物をして、準備をして、妹の勉強を見て……」

 それって、どんな気持ちなんだろう、って、ときどき思うんだ。

「でも、遊馬は美咲ちゃんのことが大好きだから、きっとあの子の前では楽しそうに話をするんだよ。
 学校でこんなことがあったとか、クラスの誰々がどうこうだとか、そういう話を。きっと、そういう癖がついてたんだよね」

 両親は仕事で帰ってこなくて、甘えたり弱音を吐いたりしたいときがあったって、誰にも甘えられない。
 それでも平気でいないと、妹が不安になるから。

「先輩の、両親って」

「遊馬は、そんなことないってずっと否定してたけど。忙しいだけって、ずっと言ってたけど。
 たぶん、それは半分なんだと思う。いくら仕事が忙しいからって、子供をずっとほったらかしなんて、ありえないもん」

「……おじさんとおばさん、美咲ちゃんが高校に上がる年に、離婚しちゃったんだよね」

「うん。たぶん遊馬は繋ぎとめようとしたんだよ。それだってきっと、自分のためだけじゃないと思う」

「……美咲ちゃんのため?」

「美咲ちゃんの誕生日は、毎年必ず家族が全員揃うんだって、遊馬は言ってた。忙しくても、子供のことをちゃんと考えてくれてるって。
 でも、遊馬の誕生日は揃わないんだ。それって、きっと、遊馬が頼んだんだよね」

 せめて、と。

「本当のことは、わからないけど。でもきっと、遊馬は寂しがり屋で、甘え下手で、つよがりだったんだと思う。
 ……たぶん、だからだと思うんだ」

「だから、って?」

 すず姉の問いかけに、ちい姉は言葉を探るような沈黙を置いたあと、返事をする。

「寂しそうだったから、好きになったんだと思う」

 そんな、堂々とした言葉に、みんな口ごもる。

「……なんか照れるね」と、静奈姉が笑う。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/782.99 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice