99:名無しNIPPER[saga]
2015/11/19(木) 22:42:48.14 ID:s4jNJoDro
◇
バイトを終えて部屋に戻ると、先に静奈姉が帰ってきていた。
「おかえり」と静奈姉はふんわり笑った。
前と変わらないような笑顔。俺はなんとなく気まずく思う。
るーに会ったということを、伝えるかどうか迷う。
こっちに来てから、俺と静奈姉はほとんどあの頃の話をしていない。
もちろん、お互い、忘れたわけじゃないことは分かっている。
昔話をしたことだってないわけじゃない。
でも、あの夏の話をすると、静奈姉はある地点で話すのをやめる。
まるでその地点から先のことが、まだ未消化のまま彼女の内側でくすぶってるみたいに。
それはたぶん、俺の知らない話なんだろうと思う。
俺がこの街を去ってから、きっと、何かがあって、前まで通りではなくなってしまったんだろう。
今ではなんとなく、その理由は想像がついていたりもする。
だからこそ、俺は静奈姉に、あの夏一緒にいてくれた人たちの話をできずにいた。
あんなに近くにいた人たちのこと。
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