過去ログ - 姫「ボクの名は姫! 誇り高き勇者の血を受け継ぐ者!」
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127: ◆WnJdwN8j0.[saga]
2015/11/29(日) 20:17:46.28 ID:Dr3RY0P00
チェロ弾き「王子様…良かった、心臓は動いていますね」

即座に王子に駆け付けたチェロ弾きは、王子の容態を確認して言った。
これで心配事は無くなったが…。

姫「魔王子…」

姫は倒れている魔王子に駆け寄った。
魔王子は虫の息といった所だが…姫を見るなり、笑った。

魔王子「はは…ざまぁみろ、って所か?」

姫「…どうして、助けてくれたの?」

彼が魔王を憎んでいるのは知っていた。だから魔王が魔力を封じられている機会を狙ったのはわかる。
だが魔王子は、命を削って王子を救ってくれた。そこまでする理由が、姫にはわからなかった。

魔王子「…何もできない自分は、もう嫌だったんだ…。言い訳になるけどさ…俺は平穏を望んでいた。でも…」

姫「…うん」

魔王子「俺は魔王が怖くて、逆らえなかったんだよ…。魔王を憎んでいるのに、奴の言いなりになるしかなくて…そんな自分が嫌だった」

魔王子はぼろぼろ涙を流していた。

魔王子「俺…ずっと心痛めてたんだ。あんたが死んだと思ってたから…それで、舞姫にあんたの姿を重ねて…ガハッ、ゴホゴホッ」

姫「魔王子!?」

魔王子「ひとつ――頼みがある」

血の気を失った顔で、魔王子は言った。

魔王子「俺のこと、また――『笛吹き』って呼んでくれないか…」

姫「…っ」

姫は魔王子の手を握った。
ずっと憎んでいた。騙されたと思っていた。それでも、2人の間に築いていたわずかな絆は、決して嘘ではなくて――

姫「――笛吹き」

そう名を呼ぶと、魔王子――笛吹きは、ニコッと笑った。

笛吹き「姫…俺、あんたのこと――」

声がかき消え、笛吹きは瞼を閉じた。
そしてその目は、もう二度と開くことはなくなった。

姫「言うのが遅いんだよ…ばか」

姫の目から涙が溢れる。
こんな奴、もう友達じゃないって思っていたのに。
利用するだけ利用して、自分の味わった絶望感を味わわせてやろうとすら思ったのに。

姫「でも1番のバカは、ボクだ……」

復讐に囚われて忘れていた。笛吹きとの間に築いた友情、彼の思いやりを。

姫「うあああぁぁ―――っ!!」

姫は大声をあげて泣いた。叫んでも取り戻せない、後悔の証。
姫が感情を剥き出しにするのは、兄を殺されて以来だった。




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