482: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/04/25(月) 23:33:33.20 ID:FN+t7kdx0
「私の初任務は入隊直後の彼女たちの教育」
「お互いに右も左も分からない未熟者同士で……」
「今にしてみれば、子供のままごとの方がまだマシだったな」
はぁ、とため息を付いて、帽子を掴んでいた右手を戻す
背筋を真っ直ぐと伸ばしているはずの背中は、何処か物悲しく曲がって見えた
「指揮官とは残酷な生き物だな」
「ただひとつの勝利、生還のために、その他を切り捨てる」
「そうはならないの誓ったはずなのに……皮肉なものだ」
「その癖、私はただの一将校にすらなり切れていない」
「犠牲を怖れるがゆえに、貴様が来るまで防衛隊の協力を拒んだのだから」
自嘲気味に呟く目の前の男に、普段の自信と矜持にあふれた姿は無かった
司令部で見せた苦悩の表情と目の前で誰となく独白する背中、それが本条誠という人間の本当の姿なのかもしれない
誰しも生きていく上で何かしらの仮面を被っている
本条大尉も例外ではなく、軍隊という官僚組織の歯車として軍人の仮面を被っているのだろう
その証拠に、今の大尉は他人に毒を吐くどころか、自分に回り切った毒を見せつけるような話しぶりだった
「本当のところ……私はお前が羨ましかったのかもしれない」
「好き勝手なことを言いながら、それを実行に移せるお前が」
「でも、それは……」
「例え1人の力でなかったとしても」
「今の……この現実が全てだ」
「お前は彼女を助けるために出撃し、私は何もできずにここにいる」
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