554: ◆pOKsi7gf8c[saga]
2016/06/18(土) 22:53:10.26 ID:urIs08YJ0
「……俺だって悔しいさ」
誰もが感情のこもらない作業を続ける光景を眺め、独り言ちする
(だが、それでも……)
無謀な戦いを挑んで船を沈ませるわけには行かない
彼女を救うことが出来る可能性がわずかでもあるなら、喜んで臨んでいた
だが、現状でそれは皆無に等しかった
単騎で鬼に挑んでも勝敗は歴然、救出を強行しても敵がこちらを捕捉している以上、共倒れになるのは必至だ
願わくば、逃げるこちらに釣られた敵が彼女を発見せず、鎮守府からの救援が来るまで彼女が持ちこたえてくれるのみ
「……小林、主砲に繋げてくれ」
先ほどの砲撃で一部被害を受けた通信をいじっている小林へ日下部に取り次ぐように頼む
その指示に了解と短く答えた小林はすぐさま、目の前のダイヤルを調整して主砲へと通信を接続する
通信確立しの合図に軽くうなずく小林を確認して、手元の通信機から日下部へ敵に砲撃をするように命令する
『でも、ここからだと……』
その命令に対して電話口の日下部はダメだといった具合に言葉を濁す
もっとも、そう返されるのは分かっていた
左舷に回頭しているとはいえ、敵がいるのは右舷後方、主砲の旋回範囲の外であった
だが、今は敵の注意を引ければそれでいい
とにかく敵へ向かって砲撃するように指示して通信を切った
「主砲、発射を確認」
数秒後、軽い衝撃と共に大久保が主砲の発射を告げる
そして敵から大きく外れて海面に着弾したことを報告し、再び口を閉ざした
東の空が薄らと白み始めた中、その薄明を求めるように船は北東へと舵を切った
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