23: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:14:51.09 ID:wxXgwuIMo
トマトの赤い実をフォークで刺しながら、トマト農家になるのもありかもしれない、なんて考える。
なれるかどうかはともかく、なろうと思えるものを見つける必要がある、例えそれが、幼い子供のように単純なものであっても。
つまり、夢だ。人生を捧げる夢が必要なのだ。
「穂乃果は小さい頃の夢、なんだった?」
「ん? お花屋さんだよ?」
「もう、なろうとは思わないの?」
「んー、そうだね。なってみてもいいかなとは思うけど、積極的になろうって感じはしないかな」
「今は歌、なのね」
「そうなるかな」
いや、聞きたいのはそこじゃない。
「小さい頃は、どうして花屋になろうと思ったの?」
「……なんでだろう」
「えぇ……」
「たぶん、お花屋さんの店員さんが美人だったとか、そんな感じじゃないかなぁ。綺麗なお花に囲まれて仕事する人に憧れてたんだと思う」
憧れ。そういえば、私は父に対して現実味のある憧れを抱いたことがないのではないだろうか。
医者という職業は、素晴らしいと思う。多くの人を救う父を凄いとも思うし、尊敬もしている。
だがどこかで、遠い人のようにも感じている。童話に出てくる勇者のような、そんな存在。
父は、私の父親として振舞うこと事態が少なかったのではないか。
病院のトップと、その後継。というのが、私と父の関係だったのだ。
憧れ、尊敬。その二点で言うのであれば、穂乃果も該当するが。
「どうかした?」
食事の手を止めて、穂乃果を見る。蒼い瞳とまっすぐに対峙する。
どこか後ろめたさを感じるのは、そういうことなのだろう。
「私があなたと歌いたいって言ったら、どうする?」
「別に構わないよ? それも楽しそうだし。……まぁ、真姫ちゃんがそれでいいのなら、だけど」
「そう、よね。今のはとりあえずなしで」
わからない。自分自身が何故こんなにも悩み、迷っているのかがわからない。
進路を決めるなんて、もっと単純なことのはずなのに。
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