過去ログ - 真姫「歩き方を教えて」
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4: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:00:57.71 ID:wxXgwuIMo
 軽やかな音と共に、深く沈んでいた意識が浮上する。まどろみのなかで優しく響く音色は、どこか懐かしさを感じさせる。

 ゆっくりと目を開ける。ぼやけた視界を二度瞬きすることで修正する。薄暗い部屋。窓から差し込む光だけが、唯一の光源だった。

 欠伸を漏らしながら上体を起こす。被っていた布団がずり落ち、ひんやりとした空気に一つ身震いを起こす。枕元の目覚まし時計は午前8時過ぎを指していた。

 少し寝すぎたかしら、などと思いつつ聞こえてくる音に耳を傾ける。この音はピアノ……おそらく、電子ピアノの類だろう。

 軽く伸びをして布団から出る。シーツと掛け布団を軽く整え、音の発生源へと向かう。

 二つしかない部屋の、玄関に面した場所。居間として扱われているそこでは、穂乃果が電子ピアノと向き合っていた。

 集中しているのか、こちらには気づいていない。広げられた五線譜を真剣に見つめている。

 五線譜は手書きだった。いくつもの修正痕があり、ところどころがぼろぼろになっている。

 旋律にも覚えがないし、穂乃果が作曲したのだろうか。

「……ふぅ」

 しばらく穂乃果の背後に立ち観察していると、不意に演奏が止まった。

「……上達したのね」

「あ、真姫ちゃん。おはよう」

 挨拶を返し、穂乃果の隣に腰を下ろす。五線譜を手に取り、いびつな形の音符を目で追いかけていく。

 私が穂乃果にピアノを手ほどきしたのは、ちょうど去年の今頃だった。


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