52:雨雪東吾 ◆66FsS2TZ4lNJ[sage saga]
2016/04/24(日) 11:33:00.04 ID:v3SJFo7Q0
卯月は大躍進を続けた。まゆを超え、智恵理を抜き、菜々を飛び越し、杏すら及ばなくなった。
しかし、後一歩でCGに届くというところで彼女は自ら階段を上るのをやめた。
煌びやかな衣装を脱ぎ、洒落たティアラを置き、身に纏ったアクセサリーを投げ捨て、ガラスの靴を砕いた。
P「・・・俺は何を間違えたのだろうか」
事務所の休憩室で独りごちる。大きな仕事を終わらせてから、彼女は休止したいと申し出た。それに関する質問が大量に寄せられ、連日電話は鳴りっぱなしだ。
他のアイドルへの影響は極力抑えるよう手配はしたが、彼女らにも煩わしい思いをさせているに違いない。
杏「・・・プロデューサーが、卯月ちゃんのことを人形か何かと勘違いしてたからじゃないの?」
P「!? おまえいたのか」
杏「電話がうるさくて事務所じゃ寝られないからね。最近は収録前とか終わりに質問攻め。いつもより倍は疲れてるのに」
P「・・・さっきのはどういう意味だ?」
杏「さあ。でもこれだけは言っとくけど、プロデューサーにとっての理想と・・・もっと言えばファンにとっての理想と卯月ちゃんにとっての理想は違うってことだよ」
P「・・・でも俺はそれで一定以上の成果を上げてきた」
杏「・・・まゆちゃんと智恵理ちゃんはプロデューサーを崇拝してるし、あんずは考えるの面倒だから言われたことをやる。でも菜々さんには助言だけしてあとは自分に任せてるでしょ?」
P「崇拝って・・・。まあ菜々はある程度大人だし、自分の理想像っつうのを持ってるから安心して任せられる。ただ他の奴らはまだ若いから、アイドルのなんたるかをわかってないだろ」
杏「菜々さんも一応十七歳だけど・・・それは今はおいとくとして、皆それぞれ何かのためにアイドルをやってる」
P「杏は印税のため、智恵理は自信をつけるため、まゆは・・・。取りあえず卯月は菜々と同じ類いだろ?」
杏「中身は全然違うよ。売れたからいいわけじゃない。卯月ちゃんは・・・多分内容が大事なんだと思う」
杏「アイドルになったとき言ってたよ。私は今は何もないけど、アイドルを続けることで何かが見つかればいいなって」
P「!」
杏「でもいざ蓋を開けてみればプロデューサーの操り人形。名声は得られるけど、それ以上のものはない」
P「ありがとう、杏」ガタン
杏「・・・プロデューサー、自分のことしか見えてないからな。だからこそ、いいってこともあるんだろうけど。もう大丈夫かな?」
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