12:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:54:52.39 ID:0Zh7X+jI0
二人分のお皿とココアをそれぞれテーブルに置いた。柔らかなソファーに体を埋めて、さぁドーナツを食べよう。
だれかと一緒に食べるドーナツはいつもより美味しいのだ。当社比三倍。
13:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:55:33.17 ID:0Zh7X+jI0
あたしにはよくわからなかった。
あたしがいつだって楽しいのはドーナツのおかげで、それに、一緒にいるみんなのおかげなのに。
14:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:56:19.05 ID:0Zh7X+jI0
ゆかりちゃんはこのあと程なくして帰ってしまって、また事務所に一人になった。
あの言葉は、ドーナツを食べたあとに紙袋に溜まった、黄色いチョコレートの粒みたいにあたしの中に残っている。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:56:56.16 ID:0Zh7X+jI0
くたびれたカーキ色のコートをプロデューサーから剥ぎ取るようにして受けとって、ハンガーに掛けようとする。
もう、ドーナツの匂いはしないなぁ。
フレンチクルーラーみたいな色のコートからは、もうプロデューサーのにおいしかしなかった。
16:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:57:32.29 ID:0Zh7X+jI0
プロデューサーは自分のデスクに腰を下した。ギシ、と軋む音がする。
あたしはまたキッチンに向かって、今度はインスタントコーヒーの蓋を開けた。
17:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:58:03.09 ID:0Zh7X+jI0
自分の分のコーヒーも淹れて、プロデューサーのデスクで並んでドーナツを食べる。
備え付けの大人用の椅子はあたしには少しだけ大きくて、つま先がぺたぺたと事務所の床を叩いた。
18:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 19:58:57.17 ID:0Zh7X+jI0
「法子は、ドーナツのおかげでアイドルを始めたんだよな」
そうだよ。ドーナツのおいしさを広めるために、あたしはアイドルになったんだ。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 20:00:19.73 ID:0Zh7X+jI0
プロデューサー、違うんだよ。
確かにあたしがアイドルを始めたのはドーナツのためだけど、でも今は、それだけじゃないんだよ。
一緒にアイドルするのが楽しくて、仕事終わり一緒に食べるドーナツが一番おいしいんだって思ったから。
20:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 20:00:59.06 ID:0Zh7X+jI0
「プロデューサーになったのに、最初は全然上手くいかなくってな。でも法子がアイドルになってから、いつもプロデューサーになって良かったって感じるよ」
「いつも?」
21:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 20:01:31.34 ID:0Zh7X+jI0
「あのね、プロデューサー」
そう言ってあたしは席を立った。プロデューサーはちょうど、ドーナツを食べようとしてるところだった。
22:名無しNIPPER[saga]
2015/12/18(金) 20:02:17.33 ID:0Zh7X+jI0
視線が、あたしとドーナツに小さくついた歯型の間をなんども行き交う。
あたしの顔も、きっとストロベリードーナツみたいな色なんだろうな。
もぐもぐとドーナツを飲み込んで、逃げ出すみたいに事務所を出た。
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