過去ログ - ありす「聖夜の国のありす」
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3: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:08:19.30 ID:WxlnYw7u0
「橘」

プロデューサーの一言に、タブレットから顔を上げる。
彼は少し困ったような顔をして頬を掻いた。

以下略



4: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:09:24.26 ID:WxlnYw7u0
私の答えにプロデューサーは首の後ろを掻いてパソコンに向き直った。
そして再び私はタブレットに目を落とす。
暖かさの欠片もない、無機質な文字列が並んでいた。

始まりは数時間前。
以下略



5: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:10:35.40 ID:WxlnYw7u0
毎年のことなのだが、二人は結婚記念日には何があってもデートをすると決めている。
去年は父の仕事が忙しく、デートができない危機だと母が騒いでいたが、驚異的な早さで仕事を終え、父は定時で退社し事なきを得た。
だから今年も恐らく私一人で、何ともない平日のようなクリスマスを過ごすのだろう。
私としては両親の仲が良い事は喜ばしいことだと考えているし、デート自体に文句はないのだが……

以下略



6: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:12:01.89 ID:WxlnYw7u0
「おはよう橘。どうした?今日はオフのはずだけど……」

ちょうど頭の中に思い描いた人が、事務所のドアを開けてやってきた。
大方、誰かの送迎をしていたのだろう。
黒いマフラーに黒いスーツ、見ようによっては変質者にも見えるプロデューサーは私の後ろに立ってカレンダーを見つめた。
以下略



7: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:12:40.66 ID:WxlnYw7u0
はい、とプロデューサーの目をじっと見つめる。
すると彼は恥ずかしそうに頬を掻きながらそっぽを向いた。

「いや……ない、けど」
「そう、ですか」
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8: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:14:24.60 ID:WxlnYw7u0
「問題しかないだろ。いくらオフとはいえ、お前はアイドルだぞ?」
「それがどうかしましたか」
「どうかしましたか、じゃなくてな……CDデビューもしたばっかりなのに、スキャンダルにでもされたら大変だ」
「ではなぜ、渋谷さんや佐久間さんがプロデューサーの家に立ち入るのは許可されているんですか」

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9: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:16:13.01 ID:WxlnYw7u0
「……クリスマスに家にいたくない何かがあるのか?」
「今日の夜は両親が共に出かけてしまいまして、家に私一人になってしまうんです」
「なるほどな……じゃあ俺の家じゃなくても別によくないか?女子寮に住んでいる子達のとこに泊めてもらえば」
「男の人がいた方が、母と父も安心かと」
「……余計問題になると思うんだがな」
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10: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:17:45.90 ID:WxlnYw7u0
「ただし、泊まるのは俺の家じゃなくて事務所。俺も泊まるから、それで勘弁してくれ」

と、真剣な目をして私に告げた。
実は彼の家……というか男性の部屋にも少し興味はあった。
しかし、メインはそこではなく、プロデューサーと一緒にいるという事であるため、
以下略



11: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:18:49.65 ID:WxlnYw7u0
暖房がつけてあるので、寒くはない、けれど。
底冷えするような静寂に、私も少し困り果てていた。
これなら一人で家にいた方がマシだったか―――と思った時。

「よし!橘、ちょっと待ってろ!」
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12: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/12/25(金) 21:19:45.38 ID:WxlnYw7u0
「……小さい、ですね」
「まぁ俺と凛、卯月、未央とたまにちひろさんが使ってたぐらいだからこのサイズで十分だったんだ。いつかまた使おうと思って、手入れだけは定期的にしてたんだ」

私がテーブルを眺めている間に、プロデューサーは黒の敷布団と赤の掛布団、そして黒い鞄を持ってきて、せっせとこたつのセッティングを始めた。
暖房がついていて、尚且つ節約ももうあまり必要ないのに、どうしてこんなものを……
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