過去ログ - 提督「不幸な男女と」
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47: ◆c4DUj3OH/.[sage]
2016/03/26(土) 12:10:41.79 ID:T6FQcsL2O
榛名「提督。本当によろしかったのですか?」

提督「…………」


窓の外には、クレーンの灯りが見えた。
執務室の時計は、午後6時50分を指そうとしている。


榛名「今ならば、まだ……」


後ろから聞こえる榛名の問いかけには、無言で答えた。
俺は執務室の窓からクレーンを見る。
赤く明滅を繰り返す航空障害灯。
そして、規則正しい動き。


提督「なぁ、榛名」

榛名「はい」

提督「前に、あのクレーンのようになりたいって言ってたよな」

榛名「ええ。榛名もドックのクレーンのように働いて、提督と艦隊のお役に立てるようにと思っています」

提督「そうか」


先端に取り付けられた赤いランプが、左右に揺れる。
クレーンは今も、新しい何かを創り出そうとしている。
それに比べて俺は。


提督「俺は、間違っていたのだろうか?」

榛名「…………」


榛名は何も答えなかった。
いや、答えられ無かったのだろう。
時に人は、柔らかなナイフで人を刺す。
柔らかなナイフは確かに傷を作るのだが、その傷は目に見えない。
そして傷は、見えぬうちに広がって、その人を死へと至らしむる。
俺は、それを恐れ、今日まで何もしてこなかった。
その報いを受けるのだ。


提督「きれい、だな」

榛名「ええ」


これが負けるということなのだ。
勝ち目は薄い、いや、いっそ皆無であることは、目に見えている。
それでも戦わなければならない。
それがどれ程虚しく、また、その行為がどれ程無為であるかを知りながらに、戦場へと送り出すことの辛いことか。


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