12: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 02:20:56.25 ID:d/9JR/ulo
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「貴方から連絡があって、それで返信を考えている時……
貴方が来てくれれば、と思いました。来てしまったらどうしよう、とも思いました」
「面白い言い回しだな」
文香にしては、いやに引っかかる呟きだった。
文香は雄弁ではないが、言葉はしっかり選ぶ方だ。
こんな要領を得ない台詞を口にするとは、珍しい。
「お忙しい貴方が、東京から長野まで私のために来てくださる……ということは、
未だに貴方が、私のことを気にかけてくださっている証……けれども」
燭台の明かりで揺らめく書院の光闇。
俺はその向こうに、滲み出るような文香の眼差しを見た。
眼光紙背――すぐれた読書家の目は、紙の裏まで見通すというが、
今の文香の目は、俺の顔の裏側まで見通してくるようだ。
「……けれども、それがポジティブな意味かどうかは、別ですから」
「つまり、何が言いたいんだ」
俺が文香に続きを促すと、文香はおずおずと言葉を続けた。
「プロデューサーさんは……私をアイドルにしたこと、後悔していますか」
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