4: ◆Freege5emM[saga]
2016/01/03(日) 17:36:36.63 ID:d/9JR/ulo
  
  
 ● 
  
 「志希ちゃんねぇ、キミとアイドルやってて、気づいたんだけどさ……」 
 「ん、何に気づいたんだ」 
 「……お仕事は、ギリギリのところまで攻めた方が、オモシロイよね?」 
  
 志希はスプーンをぺろりと一舐めして、悪びれもなく笑った。 
  
 「スケ見たら、年末年始は録画で、お休みだったからさ…… 
  クリスマスまで持てばいいや〜って思って、ガンガン飛ばしちゃったんだー。どうだった?」 
 「……いい仕事してくれたのは、伝わったが」 
  
  
  
 「うんうん、だから〜、今こうなっちゃってるのも、志希ちゃんの計算通り、ってなワケでー……」 
 「なぁ、俺帰っていいか? 大掃除まだなんだよ」 
 「うぇーん、プロデューサーの薄情者ー、 
  この一年キミに尽くしてきたあたしに……そんな仕打ちがあるかーっ」 
 「身から出た錆は自分で落とせ」 
  
 志希がこうして勝手な理屈をこねだすと、スカウトしたばかりのことを思い出す。 
  
  
  
 「体がこんなになっても、いいやって、仕事に打ち込めたのは、 
  キミがお世話してくれると思ったからー。だから特別だよ? トクベツ♪ 良い響きだよねぇ……」 
 「はいはい、一ノ瀬サンは特別なアイドルですよ、と」 
  
 今でこそ一端のアイドル面している志希だが、 
 最初の頃は仕事中に失踪したり居眠りしたり、事務所屈指の問題児であった。 
  
  
  
 「ふぅああっ……おかゆー、おいしかったよー。 
  んー、お腹がふくれたから、ねむくなってきちゃったなぁ……」 
 「こらこら、寝る前に着替えて体を拭け。俺はタオルを用意しておくから、服とってこい」 
  
 志希が俺に見せる生活能力の低さを考えると、 
 本当にこいつ一人暮らしできているのか? 
 という疑問がしばしば湧いて来る。 
  
 他人がいなければちゃんとやる、という人もいるから、その種なのか。 
 そういえば、同僚の双葉杏も常識はずれの怠惰さだが、 
 それでも――諸星きらりの世話になりつつ、だが――なんとか一人暮らしを維持していた。 
  
  
  
 「ぶー、プロデューサー? 今、ほかの子のこと考えてたでしょ」 
  
 志希が俺の服をくいくいと引っ張ってきた。 
  
 「よく分かったなぁ。さすがの鋭い観察力だ。ユッコや都がうらやましがるぞ」 
 「ナニその言い方、わざと? もーやだ、ふて寝しちゃうもん」 
 「はいはい、今お湯を沸かしてくるから。着替え出しておけよ」 
  
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