40:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/05(火) 23:13:58.70 ID:s07CgCum0
吹雪の不運は二つ。
一つは彼女が拾われた時、既にそこには彼女よりも遥かに高練度の吹雪がいたこと。
もう一つは、その鎮守府の提督が艦娘達のケアに対して非常に無関心であったことだ。
「吹雪」は彼女を嫌悪し、そして弱さを軽蔑し虐げた。
訓練と称して加えられる暴力と悪罵。
それは地獄の日々であった。
ヘアゴムは捨てられ、伸ばした髪は無理やり切られ、艤装は整備した傍から破壊され続けた。
提督も弱い吹雪に資材を費やすのが勿体ないと思っていたのか、彼女は自分自身の拙い手でもってどうにかそれを使えるように直すことしか出来なかった。
気付けば心は挫け、自信と呼べるものは消え去り、吹雪は艦娘と言うには余りにも弱く、いじけた少女へとなっていた。
「吹雪ちゃん、改二の艤装の調子はどう?」
鎮守府のグラウンドを何周走っただろうか、走りながら提督は隣で走る吹雪に話かける。
「はい!最初は正直振り回されてる感覚でしたけど、明石さんのメンテのおかげで今は問題無く」
「それだけじゃないでしょ?」
「え?」
その言葉の意味を問う前に、提督は走る足を止める。
気付けば練習メニューの周回を走り終えていた。
バスケットから提督は二枚のタオルを出すと青色を吹雪に渡す。
ふわふわと柔らかいタオルからは清潔な石鹸の香りがする。
たっぷりと温まった身体からは白い湯気が立ち上り、薄暗い空気へと溶けていく。
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