過去ログ - 提督「金庫って十回言わせてから」
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51:以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします[saga]
2016/01/07(木) 15:49:49.60 ID:MV/AJIdTo
(どうしたものか……まさか龍田がこんなことになってるなんて思いもしなかった……)
鉛筆でぐりぐりと塗りつぶしたような瞳。
深く濁ったそれは闇というよりも沼を想起させる。
ずぶずぶと、足元から喰らい尽くす。深い、不快な沼を。
(逃げ――)
よう。と思うが早いか。龍田の瞳が一層濁りを増して。
『艤装展開』
悪霊の怨嗟の声をよりもなお昏い呟きがその艶やかな唇から漏れ、
龍田の身体の周囲にナノマテリアルが光の粒子となって瞬く間に艤装が構築される。
『ぎ』の一文字が出ると同時に展開が始まり。
『い』といい終わるまでに展開が終わるその作業は原理を知らぬ俺には魔法にしか見えない。
そうして出来上がった艤装を纏う龍田。
リノリウムの床は急激に増加した重量でずどんとわかりやすい音を立てて
クレーターを作りだす。いくら小さくても船は船。その重量は大戦期の頃とは比べ物にならないとはいえ、
床くらいは容易にこの有様だ。だから鎮守府内での艤装展開を禁止しているというのに。
「……なんのつもりだ龍田」
空気を切る。というよりは裂く音がして、
薙刀のような彼女の獲物が俺の横に鋭く降ろされる。
「だって、提督逃げようとするんですもの。私、悲しいわ〜」
ちらりとその振り降ろされた刃に目をやって、
ため息を一つ。龍田を正面から見つめれば、
不安そうな、困ったような、興奮したような、戸惑ったような。
「逃げる? 俺がなんで龍田から逃げるんだ?」
心臓が早鐘の様に鳴っている。
ここで選択肢を間違えてはいけないと脳幹辺りがテールランプみてぇに真っ赤に染まってる。
「むしろ聞きたい。龍田、どうして俺が逃げるなんて発想がでたんだ?
それこそお前が俺を信じてない、疑ってるという事の証左じゃないのか」
いいながら一歩近づく。瞳が揺れる。
重ねて一歩。龍田が後ずさる、それを許さずさらに一歩。
「て、提督……もしかして、怒ってます?」
瞳と共に揺れる声。俺はなにも言わずにその肩を掴む。
「ていとくぅ……?」
小柄な彼女の事。近づき向かいあえば自然彼女は上目遣いになる。
潤んだ瞳を見下ろして……俺は、なにかを言わないとと思って。
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