過去ログ - 翔太「一狩り行こうぜ!」冬馬「物理的な意味でな」
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3:名無しNIPPER[saga]
2016/01/26(火) 21:54:08.17 ID:wFbItLEAO


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「一ヶ月ぶりだな」

「ええ」

 月に一度の面会日だった。

 木製のテーブルを挟んだ向かいに腰掛けているのはかつては私の夫だった人だ。
 形だけの短い挨拶の後にはお金のこと、保険のこと、生活のこと。いつも通りの事務的な会話が待っている。

「……お前また少し痩せたんじゃないか? ちゃんと食べてるのか」

「食べてるわ。余計な口を挟むのはやめてと言ったでしょう」

「……」

 手元のカップに視線を落としていても彼が憮然と眉を寄せたのが分かる。
 こんな棘のある言い方がしたいわけじゃない。でも自分ではどうしようもなかった。
 素っ気なく煮え切らない私の物言いに彼がイライラしている。私もイライラしていた。
 噛み合わない感情のズレが互いに互いを苛立たせた。

 夢の中で上手く走れない時のようなもどかしさ。何百、何千回とこんな何の進展もないやり取りばかり私達は繰り返している。
 店内に流れるクラシックのBGMだけが重苦しい空気の合間を縫って軽やかに響いていた。


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