過去ログ - 翔太「一狩り行こうぜ!」冬馬「物理的な意味でな」
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6:名無しNIPPER[saga]
2016/01/26(火) 22:24:53.30 ID:wFbItLEAO


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『……じゃあそろそろ私も明日に備えて寝ます。お母さんもくれぐれも身体には気をつけて。おやすみなさい』

 十回目の再生が切れて、いよいよ重い沈黙が一人暮らしの部屋にのし掛かる。
 このひとりぽっちの時間のやり過ごし方にはもうとっくに慣れたはずなのに。
 月に一度のこの日だけは、いつもどうしても心の底から叫び出したくなるような醜い感情を抑えきれない。


「ああ……あああ……うっ……ふっ……うぅ……」


 受話器の上にぽたり、ぽたりと涙が落ちる。
 暖房も付けていない寒々しい部屋にそのままずるずる座り込んだ。ストッキング越しにフローリングの床がとても冷たい。


「優……優……会いたい……優……」


 私だけが取り残される。私だけが幸せだった過去にいつまでもしがみついている。
 私だけがもう甘い味などしないあの頃の思い出の後味をいつまでも噛み締めて吐き出せないまま生きている。

 あの子は既にいろんなことを乗り越えて、テレビの中で、ステージの上で、優しい仲間達の輪の中で、あんなにも力強く楽しく歌っているというのに。


「ちーちゃん……優くん……ごめんね……お母さん弱くてごめんね……ごめんね……」


 私はもういつから笑っていないのだろう。
 私はあの頃どうやって笑っていたのだろう。忘れてしまった。
 たくさんの大事なことをすっかり忘れて、そうして本来忘れてしまわなければならないことだけ私はずっと覚えている。

 正しい笑い方が分からない。誰か私に教えて欲しい。誰か。







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