過去ログ - 翔太「一狩り行こうぜ!」冬馬「物理的な意味でな」
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5:名無しNIPPER[saga]
2016/01/26(火) 22:13:44.73 ID:wFbItLEAO

 アクリルの伝票入れに無骨な大きい手が伸びる。

「あ。今日は私が……」

「じゃあな」

 私の言葉を途中で遮り、指先で伝票を攫って彼が背を向ける。

 二十年前。初めてのデートでこの人のこういうところに私はとてもドキドキしていた。
 十年前。幼い子供達に囲まれながら、この人のこういうところがとても温かいと思った。

 今は何も感じない。何も。恨みすらない。ただ悲しい。何かがとても悲しい。

 カランと高いベルの音を鳴らしてドアから出てゆく少し丸めた背中にあの人も歳を取ったなと思う。私も歳を取った。

 誰かの去ってゆく後ろ姿はいつも寂しい。あの時も。あの時も。あの時も。
 もう誰もどこにも行かないで欲しい。誰も私を置いて行かないで欲しい。

 それを素直に口に出来ない不器用さが私を今こんなにも孤独にさせたのだろうか。
 あまりにいろんなことを悲しみ過ぎる悪い癖。

 冷めてしまったコーヒーの表面にはのっぺりした、つまらない中年女の無表情が映っている。




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