過去ログ - 【fate】蒔寺「アタシはお前が嫌いだ」士郎「……そっか」
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◆rmBd.WnMF2
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2016/01/29(金) 17:42:50.45 ID:2CEqr2CX0
氷室鐘の独白
――――あれは、雨の降る蒸し暑い昼下がりだったな。
三年に進学して四ヶ月も経ち、学生時代最後の夏休みという奴に突入した私達は、
蒔の字に誘われて『受験勉強の息抜き』にと、新都に集まっていた。
その日は残念ながら、夏には珍しく強い雨が降っていたが、私達にとってはそんなものは然したる問題ではなかった。なにせ相手はあの蒔の字だ。
喩え槍が降ろうと彼女が居れば問題なかろうとまで(私の中で)思われている彼女だ。そんな蒔の字と、常識人である三の字と馬鹿馬鹿しい話に興じていれば、否がおうにも気分は晴れる。
そう……あの瞬間まではそう思っていた。
――――雨の中、私達は新都の交差点で信号が変わるのを待っていた。
口にするのは他愛ない話題。例えばそれは――
「遠坂の奴、最近付き合い悪いよなー」
「遠坂嬢の卒業後の進路は海外の大学への留学だったか。ならば仕方なかろう。海外留学ともなれば準備はしすぎるに越したことは無い。」
「遠坂さんは凄いね……進路といえばそういえばさ、蒔ちゃんは進路希望出した?」
「んー……近場の大学ってのでアタシは考えてるんだけどねー。親父殿からは『家を継ぐにしろ継がないにしろ、大学に行く事は考えておけ〜』って言われてるけどさぁ……なーんかピンとこないっていうかさ……」
「珍しいな。蒔の字ならばこの手の問題は即断即決で私と三の字を巻き込む物だと思っていたが……」
「さしものアタシと言えどそんな強引な事は……しないとはいえないが今はやる気はしないぞ!!」
「蒔ちゃん……そこは断言しようよ……」
こんな風な当たり前の学生の悩みでな。当然ながら、この時分には『彼』の名など欠片も出てこなかった。
なにせ、蒔の字はともかく、この時の私は『彼』の下の名も知らなかったからな。
「おっ!!信号変わった!!よーし、次はどこ行く?アーネンエルベ?」
信号が変わって飛び出した蒔の字はこちらを振り向いて問うて来た。それに苦笑を返して答えようとした私と三の字は、そのまま固まってしまった。
この雨で彼女が見えなかったのか、それとも他に車も居なかった為の信号無視かは知らないが、大型トラックが彼女に向かって走りこんで来ていたのに私達二人は気付いたのだ。
「蒔の字!!危ない!!」
……そう、言おうとした。いや、叫べ、動けと私は思っていた。恐らくは三の字もそうだっただろう。
……だが、私の体は死んでしまったかのようにピクリとも動かず、だというのに彼女を見つめたままだった。
彼女もまた飛び出してから速度を落とさないトラックに気付いたのだろう、間近に迫った死の恐怖に顔を歪め、助けを求めたのか此方に顔を向け……そして、その表情は凍りついた。
それが何故なのか、私の頭では理解できなかった。なにせ自分が死にそうだというのに、その死以上に、それが理解できないというような顔を此方に向けたのだ。
「蒔寺!!危ない!!」
近づいてくるトラックの轟音、その暴威に抗うかのように私達の後ろから声と風が吹き抜けて行った……いや、『彼』が走り抜けて行ったのだった。
その足取りには微塵の躊躇いも感じられず、その走りはいままで見たことが無い程に速かった。
その瞬間、運転手がようやく気付いたのだろう。トラックが大きな音を立ててブレーキを踏むけたたましい音が鳴り響き、そして通り過ぎた辺りで止まった。
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