105:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 02:02:20.54 ID:NYPOpsNEo
箱を開けると、
桜が舞った。
三月のまだ冷たい風に吹かれて、桜色の花びらが、ハラハラと舞い上がった。
あまりにも突然のことに、私は声をあげるのも忘れて、呆然とそれを眺めていた。
嬉しくて、切なくて、何が何だか分からなくなって、視界がにじんだ。
ちなつ「……もう、これ、あかりちゃんでしょ」
数十秒ほどして、落ち着きを取り戻した私は、ようやく何が起きたかを理解し、あかりちゃんの方を見た。
あかり「えへへ、びっくりした?」
あかりちゃんはいつもの笑顔でそう問いかける。
ちなつ「びっくりしたよ。これ、あの時の紙吹雪でしょ」
箱の中を見ると、バネのようなものが仕掛けられている。
箱を開けた時に、この仕掛けに突き上げられた紙吹雪が、丁度部屋に吹き込んできた風にあおられて
まるで桜のように舞ったのだ。
桜色の紙吹雪。二年前のあの秋の日に使い忘れたそれが、時を越えて今、私を祝福した。
卒業の日に私を祝福した。
そう思うと、また涙がこみ上げそうになった。
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