76:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:41:37.30 ID:NYPOpsNEo
結衣「これを飲んだら、行こうか」
そう言って結衣先輩が缶に口を付ける。
これが最後のチャンスだ。私は意を決して顔を上げ、結衣先輩の方を向いて、その言葉を口にした。
77:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:42:07.60 ID:NYPOpsNEo
――あの時私の中にこみ上げて来た感情の正体を私は知らなかったし、
きっと永遠に知ることはないと思っていた。
知る資格さえないだろうと、そう思っていた。
78:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:42:39.82 ID:NYPOpsNEo
ちなつ「あの時、聞いてたんですか……」
魔法使いが魔法を解いた、と結衣先輩は言った。
それはあの日、眠っているあかりちゃんの前で私が紡いだ、私の物語の出来事だ。
79:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:43:10.80 ID:NYPOpsNEo
ちなつ「聞かれてたのは驚きましたけど、それはいいんです。それより結衣先輩、さっきの言葉はどういう意味なんですか?」
魔法使いがシンデレラを好きになってしまった、なんて。
あかりちゃんが私のことを好きになってしまった、なんて。
80:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:43:39.76 ID:NYPOpsNEo
結衣「どうもこうも、そのままの意味だよ。魔法使いが魔法を解いたのは、シンデレラがわるいシンデレラだったからなんかじゃない。
魔法使いは、シンデレラに協力している内に、シンデレラのことが大好きになってしまったから、
だからきっと、王子様にシンデレラを奪われたくなくて、魔法を解いちゃったんだよ」
結衣先輩が言葉を続ける。
81:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:44:29.02 ID:NYPOpsNEo
ちなつ「……違いますよ結衣先輩。魔法使いは、魔法を解いたりなんかしていません。
あかりちゃんはずっと魔法をかけ続けてくれていたんです」
私はそう言って、ベンチから立ち上がる。
82:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:45:05.38 ID:NYPOpsNEo
ちなつ「わるいシンデレラはもう、王子様に憧れる、むかしばなしの登場人物ではなくなってしまったんです。
魔法使いの魔法は、むかしばなしのシンデレラにしか通用しませんから、だからもう魔法はかからなくなっちゃったんです」
わるいシンデレラは、王子様ではなく、魔法使いでもなく、
いつも傍にいてくれた一人の少女に恋をする、ただの女の子になってしまったのだ。
83:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:45:59.49 ID:NYPOpsNEo
きっと長い目で見たら、こんな想いに気付かないで、結衣先輩に告白してしまった方が楽だったはずだ。
この充足した気分はきっと今だけのもので、これから私は結衣先輩に振られることよりも、もっとつらい思いをするのだろう。
だけど、もしかしたら、それこそが私に与えられた本当の罰なのかもしれない。
84:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:46:34.22 ID:NYPOpsNEo
*
あかり「ち、ちなつちゃん、どうしたの? こんな時間に」
私は結衣先輩の言葉のとおりにすることにした。
85:名無しNIPPER[sage saga]
2016/01/30(土) 01:47:16.90 ID:NYPOpsNEo
ちなつ「ごめんね、あかりちゃん。急におしかけて」
あかり「ううん。ちょっとびっくりしたけど、大丈夫だよぉ」
私とあかりちゃんは二人並んで夜の道を歩いている。
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