過去ログ - シェアハウス (オリジナル百合)
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21: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/02/05(金) 17:46:36.66 ID:CnMOex1r0
次の日、祭ちゃんの写真をたくさん家に持って帰った。
家に帰って、雑貨屋さんで無地のアルバムを買った。
沢山あって全部は入らなかった。
特にお気に入りなのは中学校頃の。
まだ互いに化粧なんてしてなかった頃の写真。
放課後の運動会の練習に祭ちゃんが来なくなってしまった時だったと思う。
当時は、両親もいなくなって途方に暮れていて。
私には想像がつかないくらいの心境で。
何かを一生懸命に耐えていたのは分かった。
何度か、クラスメイト何人かと祭ちゃんの家に出向いた。

『祭ちゃーん!』

玄関の前で扉を叩いた。
鍵が開いていたので、勝手に上がった。
みんなも恐る恐るついて来てくれた。
でも、一番怖がってたのは私。
祭ちゃんにどこまで踏み込んでいいか私にも分からなかった。
いてもたってもいられなかったのは、自分が彼女の何の救いにもなれないのが嫌だったからだ。
祭ちゃんは妹と一緒に部屋に閉じこもっていて、私が呼んでもなかなか出て来てくれなかった。

暫く経って、

『出て行って』

と言われた。

『あ、明日は来るよね?』

『行けたら行くから』

『約束、してくれないと』

『やめて。そんな気分じゃない』

口々にみんなが励ますけど、祭ちゃんには届かなかった。
私たちはどこか諦めていた。
可哀想だとか。
今は放っておいてあげないととか。
傷を抉るだけじゃないとか。
運動会くらいいいじゃないとか。
誰もがそう思っていたに違いなかった。
たった一回の学校行事になんの意味があるんだろう。
1時間、2時間と経つにつれて人は減り、ついに私一人だけになってしまった。

ほんと、何の意味があったんだろう。
それでも、私は諦めきれなくてとうとう泣いて駄々をこねてしまった。

『祭ちゃんがッ……いないの……やだぁッ……ゥ』

ご近所に聞こえるくらいの大声だった。
今思えば、なんて恥ずかしいことをしてしまったのかと思う。
耐えきれなくなったのは、祭ちゃんだった。
暫く経ってから、扉が開けられて、目を真っ赤にさせた祭ちゃんが出て来た。

『なんで、妻鳥が泣くの……』

『わがッ……ない』

『泣いてもどうしようもないことだってあるんだから』

『でも、祭ちゃんッ……出て来てくれた』

『確信犯か……』

『ちがうよッ』

私は祭ちゃんの頬を両手で挟んだ。

『祭ちゃんが大切だから……』

続く言葉は喉の奥にしょっぱいものが流れてきてせき込んで言えなかった。
祭ちゃんを見ると、怒っているようだった。

『大切って、なに? 大切だからなに? 面倒見れるの? 私と妹の』

『それは……』


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