32:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 06:04:42.53 ID:/p0Ll9udO
「う……うわ!」
僕は驚いてお弁当箱を落としてしまった。
カラフルなお弁当は、さっき見たばかりの子供たちのものだった。
「なんで……」
僕は訳が分からず記憶を辿った。
さっき、僕はばいきんまんの姿を見つけて、お弁当を奪うのをやめるように叫んだんだ。
そして僕は……僕は……。
「僕は……みんなからお弁当を奪ったんだ……」
驚いて僕を見上げるみんなの顔を思い出すことが出来た。
ばいきんまんまで驚いて、僕の方を見て固まっていた。
僕の思い出す記憶は空も灰色で、地面も灰色で、とても寂しくて冷たい世界だった。
その中で僕は笑っていた。
「そんな、なんでこんなことに……」
とりあえずお弁当を返しに行かなきゃ、と僕はすぐに思った。
けれど、僕は怖くて一歩も歩き出す事が出来なかった。
空は森の木に隠されてなにも見えず、地面も少しずつ灰色になっていくようだった。
「アンパンマン!どこだ!」
突然、森の中へ突き刺さるように、鋭い声が辺りに響く。
この声はカレーパンマンの声だ。
いつものような明るい優しい声ではなく、僕にはとても恐ろしい声に感じた。
僕はなにも考えられず、薄暗い森の中を走り出した。
すると、森の中に足をくじいて倒れている人がいた。
「ああ、良かった。アンパンマン、助けてくれ」
反射的に手を差しのべそうになった僕は、慌てて腕を引っ込めた。
世界が一気に灰色になったからだ。
「……ごめんなさい!」
僕はその人をよけて、森の奥へ走った。
どうしてこんなことになったのだろう。
やっぱりばいきんまんのせいなんだろうか。
「ばいきんまん……」
また世界が灰色に変わったので、僕はぶんぶんと頭が取れそうなくらいに首をふった。
「ダメだ、なにも考えちゃダメだ……!」
僕は息の続く限り走り続けた。
そして、僕はへろへろになって地面に倒れこんだ。
酷い眠気が僕を襲い、抗うことも出来ないまま、僕は眠りに落ちた。
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