42:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 06:23:45.19 ID:/p0Ll9udO
「これ、なに?」
「悪い心と良い心を一つに戻す道具だ。さっさと使え」
「えっ、でも……これは僕は使えないよ」
「なんだと!?」
目を見開いて驚き、ばいきんまんは調子っぱずれな高い声を出す。
彼の戸惑う視線を背に、僕は霧吹きをロールパンナちゃんへ差し出した。
「これは君が使うべきだと思うんだ。ロールパンナちゃん」
「……分かっているのか。
それを使わなかったら、お前はまた悪の心に囚われるかもしれないんだぞ」
「分かってる。けど、ロールパンナちゃんはずっとこんな思いをしてきたんでしょ?
それなのに、これからもロールパンナちゃんだけが辛い思いをするなんて、おかしいと思うんだ」
ロールパンナちゃんはしばらく無言で霧吹きを見つめて、僕の手から受け取った。
僕はほっとしたのに、ロールパンナちゃんはそれを僕の顔に向けて吹き付けた。
急に僕は胸が苦しくなり、顔が濡れて力が抜けていく。
「ロールパンナちゃん……なんで……」
「これで、私の勝ちだ。アンパンマン、言うことを聞いてもらおう」
「えっ……?」
ロールパンナちゃんはなんでもない顔で、当たり前のことを言うように言った。
「私はパン工場には帰らない。そして、お前もパン工場に住み続けろ。
分かったな」
「なんでそんなことを……そうしたらロールパンナちゃんは」
「私は自分の運命を受け入れているつもりだ。
それに、自分の運命と戦っていく。今も、これからもそれは変わらない」
そう言い残して、ロールパンナちゃんはマントをひるがえし、遠くの空へ消えた。
僕はその後ろ姿がカッコよく見えた気がして、一気に体の力が抜けて飛べなくなった。
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