43:名無しNIPPER[sage saga]
2016/02/10(水) 06:25:20.90 ID:/p0Ll9udO
「アンパンマン、しっかりして!」
そばにいたメロンパンナちゃんが、落ちていく僕を支えて地面へ降ろしてくれた。
僕たちがゆっくり着地した辺りの町並みは、以前の面影をあまり残しておらず、僕は改めて胸が苦しくなる。
家があった所はガラスやレンガの破片が飛び散り、僕の足元には翼の折れた飛行機のおもちゃが落ちていた。
そんな瓦礫の間を、足を滑らせながら街の人達はこちらへ向かってくる。
僕はものすごく逃げ出したくてたまらなかったけど、みんなの目をしっかり見ることにした。
「みんな、ごめんなさい」
僕は巻き込んでしまった街の人達に、精一杯頭を下げた。
みんなに出来るのはこれぐらいしかなくて、そんなことで許してもらえるかも分からない。
けれど僕は真剣に謝った。
街の人はみんな胸を痛めて、なにかをこらえているような顔をした。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、街は静けさに包まれた。
しかし、しばらくすると辺りから泣き声が聞こえ始めた。
「アンパンマーン!」
僕を囲む人の隙間を駆け抜けて、泣きながらちびぞう君が僕に抱きついた。
僕はちびぞう君の体重を支えられずに、後ろへと倒れ込む。
「良かったぞう……良かった……!」
続けて子供達がどんどん僕に抱きついてきて、驚いている僕はなにも言えないまましがみつかれていた。
どうしよう、と考えるより先に僕も涙がこらえられなくなり、おしくらまんじゅうのようになりながら、みんなと一緒に泣いた。
彼らのお父さんやお母さんや、町中の人が僕のために泣いてくれているようだ。
その声を聞いているとやっぱり胸が苦しくて、痛くて辛くて逃げ出したくて。
でも、嬉しくて仕方がなかった。
離れたところで、しょくぱんまんやカレーパンマンやバタコさんも泣いている。
さらに遠くに、ジャムおじさんの後ろ姿が見えた。
「ジャムおじさん!」
気がつくと僕は叫んでいた。
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