過去ログ - ジャムおじさんの息子
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44:名無しNIPPER[saga sage]
2016/02/10(水) 06:27:09.00 ID:/p0Ll9udO


「待って下さい、ジャムおじさん」


僕は抱きつくみんなに謝りながら、人混みの中を抜けてジャムおじさんの所へ駆け寄った。
ジャムおじさんはこちらを振り向いて、暗い顔で頭を下げた。


「アンパンマンにはいくら謝っても足りないだろうね。
私はアンパンマンに自分の理想を押し付けてしまった。
強く優しいヒーローであってほしい、なにも見返りを求めないヒーローであってほしい。
それは、私のエゴだった」


ジャムおじさんはもっと苦しげな顔をして、重たい声で僕に謝った。


「それに……私はかつて離ればなれになってしまった息子を模して、アンパンマンの顔を作ってしまった。
どんなに謝っても、許されないことだと思ってるよ」

「そうですか。ということは、僕はジャムおじさんにも似てるってことですよね?」

「えっ?」

「だってジャムおじさんの息子にそっくりなら、僕もジャムおじさんにそっくりなんだなぁと思ったんです」


ジャムおじさんはなにも答えずに、ただ地面を見つめた。
僕はそんなジャムおじさんに笑いかける。


「僕を作り出してくれたのはジャムおじさんです。
それに、僕に正しい力の使い方を教えてくれたのも、ジャムおじさんでした。
ジャムおじさん」


僕はジャムおじさんの手をとって、強く握った。


「僕を、ヒーローにしてくれてありがとう」


ジャムおじさんは涙目になって、そっとうつむいた。


「アンパンマンはまだまだ子供だなぁと思っていたけど、こんなにも大人になっていたんだね」

「いいえ、まだ僕は知らないことだらけです。
だからジャムおじさんやみんなに教えてもらって生きていくつもりです。
ちょっとずつ大人になって、もうみんなを傷つけたりしないようになります」

「ふふ、やっぱりアンパンマンはもう立派な大人だよ」


ジャムおじさんは僕をぎゅっと抱き締めた。


「私の息子になってくれてありがとう。アンパンマンは私の自慢の息子だ」

「……はい!」


すると、僕たちにバタコさんも抱きついてきた。
泣きすぎてなにを言ってるか分からなくて、僕たちは少し苦笑いをする。
そして、カレーパンマンやしょくぱんまん、メロンパンナちゃんやチーズも次々に抱きついてきて、僕はやっぱりよろけてしまう。
けれど、そんな僕をみんなが支えてくれた。
僕たちは支えあって生きている、そう思うと僕の胸はまた温かくなっていく。
景色はいつもよりずっとずっと色鮮やかに見えて、みんなの笑顔も前よりずっと輝いて見えた。



終わり


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