過去ログ - 曙「バレンタインなんて大っ嫌い」
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26: ◆1VwSTfn.DM
2016/02/14(日) 17:58:33.04 ID:Wn2ZaAmv0
「ところで、どうしてまだ執務室にいるんだ?」
クソ提督の本命を考え始めたところで疑問を投げかけられた。椅子ごと向き直り、疑問に答えてやることにする。
「そりゃあ、アンタを待ってたからね」
「俺を?……なんか去年を思い出すな、バレンタインじゃないけど」
「私も軽くデジャヴってた、去年と違って作ったのはカレーじゃないけど。はいこれ、私から」
机の端に置いておいたそれを手に取り、クソ提督の胸元に軽く放り投げる。
クソ提督は投げられたそれを目で追うのみで受け止める動作を起こさず、それは見事クソ提督の胸元にベシ、と着艦に成功した。我ながら見事なコントロールだ。
クソ提督が手に取るそれは、飾り気のない控えめな包装紙に包まれた小さな板のような物。隙間から漏れる匂いからしてすぐに中身がチョコレートだと分かるだろう。
ただ、クソ提督は怯えた目でこちらを見る。
「ええと……これが……死ぬ程苦いと言う……」
「何言ってんの、甘い匂いで分かるでしょ。ただのチョコレートよ」
「やー……匂いだけならいくらでもつけられそうだし……」
「なんだったら食べてみなさいよ?そこまで怖いなら舐めるだけでもさ」
そう促されるがまま、怯えを残したままクソ提督は包装を解き始める。地雷処理でもしてるのかと言うくらい慎重だが。
そうして露わになったそれはどこから見ても立派な板チョコのはずだ。クソ提督はそれを身体を起こした後にしげしげと見つめ回し、後には引けず観念したかの様に目を瞑り、表面を軽く舐めた。
「……あっ、普通のチョコだコレ」
「言ったじゃん」
ふぅ、とする様子からして完全に安心した様だ。そこまで怯えられるとちょっと面白くすらある。
「なんだよー、包装紙に包んだり一度溶かしてまた成型なんて手間踏んでくれちゃって。完全に騙しに来てるじゃねーか」
「アンタがよくするイタズラみたいなもんでしょ。どうせなら舐めるだけじゃなくてガブって行きなさいよ」
「……コレ渡すために待ってたのか?」
急に神妙な顔つきに。確かに消灯時間は過ぎているけど、コイツが今更そんな事で咎める性格してるだろうか。
私としてはそれ以外にやましいことはしていないので素直に答えるのみだ。
「うん、そうだけど」
「…………」
無言で見つめられるのは居心地が悪く、つい視線を逸らしてしまう。何かあるってなら言ってくれればいいのに。何も言わないで伝わる程私はサイキックとかに通じていないんだけど。
一分か数十秒か経ったくらいか、クソ提督の表情からは硬さが消え、代わりに諦めと悟りが混じった様な笑みが浮かぶ。
それの意味するところは分からないが、とにかく私に何か落ち度みたいな何かがあった訳ではなさそうだ。
「それじゃ遠慮なくいただきますか」
クソ提督は私から目を外し、私"特製"チョコに深くかぶり付く。
私が笑いを堪えていることになど気付きもしないだろう。
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