過去ログ - 南条光「砂糖無しで、ミルクはいっぱい」
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4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:39:30.27 ID:vaXUSRZy0

 思い返してみると、飴玉の類は口寂しいから食べてるような風体だったから、他と比べるとあまり好んでいないかもしれない。同じ理由で、グミやガムもそれほど好んでないだろう。

 逆に、パフェやあんみつなど、腰を据えて食べる甘い物は大のお気に入りだった。それ以外にも、雨宿りがてら駆け込んだで、急かされたように覚悟を決めた目でバナナタルトにかぶりついてたことも覚えてる。

 タルトが届くまでの間、糖分が欠けた禁断症状(と、彼は呼んでる)で心が折れぬよう雑誌を読みながら堪え忍んでたことも、雑誌の表紙の女の人の真っ白なフレンチ・ネイルの美しさも、抱かれていた真っ黒なパグの可愛らしさのことも、何一つ忘れていない。

「どれだけ甘いものが好きなんだ?」

 必死になってタルトにかぶりつく彼を見て投げかけた質問をリピート。

「男がこういうの好きなのって、世間体が悪いだろ」

 内緒にしてくれと言いたげな彼の笑顔と口調も再現した。どうしてか、口の周りがベッタリと甘くなる。食べてるときの彼を真似たからだろうか。

「そんなこと言わないでくれ。男の甘いもの好きがダメなら、アタシなんか特オタだぞ、……むぐ」

 全部を言い切る前に口を塞ぐよう突っ込まれたバナナの甘さも想起した。その次に思い出したのは、ミントの葉の清涼感だ。

「いいじゃないか。光の趣味は、光の趣味なんだし」

 その言葉に対し、あの時、どうしてアタシは「ならPの甘党だって別に問題がないだろ?」と返せなかったんだろう。肩をすくめて無邪気に笑うPを見て、何故か何もしゃべれなくなっていた。

「……ふへへ」

 気付くと笑っていた。多くの思い出がアタシの中にあることを改めて確認出来たのが嬉しかったのだ。データの山を無駄にするわけにはいかないぞと自分を奮い立たせ、一人芝居を止めて料理を再開した。

 板チョコを割る・刻む・湯煎する。マシュマロを火にかけて焦げ跡を作り、中身を溶かして表面にシナモンを振る。バナナを刃先のテコを利用して勢いよく切り分けるのが、危ないようでなかなか楽しい。

 スーパーで売られてるありふれた材料に、アタシの命を流し込む気持ちで調理した。

 喜んでくれるかな。あの笑い顔がもう一度見たい。アタシの全力で彼のお腹を満たしたい。自分のしたいことに正直になればなるほど、手の動きに加速がついて、止められなくて、あらゆる一流パティシエにも負ける気がしない心地になった。


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