過去ログ - 南条光「砂糖無しで、ミルクはいっぱい」
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5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:40:42.98 ID:vaXUSRZy0
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「で。実際のところ、出来上がりましたか?」

 同じく厨房を利用してたありすちゃんが問いかけてきた。アタシは背筋を反らして天を指さし、半身をひねって彼女に返事した。

「Pの心に響くお菓子……それは、南にある……!」

「哲学とかいりませんから」

 バッサリと切り捨てられた。彼女ならこういう正しい反応をしてくれると信じていたから、大仰でふざけた芝居を打つことが出来た。

「正直、かなり煮詰まってる……作って壊してもう三日。味と味が喧嘩してしまうんだ……うう、理想の食材を並べて叶うほど甘くなかった……!

 はぁと大きくため息をつき、肩を落としてうなだれた。これは芝居じゃない。山となって詰みあがっている失敗作の数々を視界に入れたくなかったのだ。

 五体合体玩具をツーセットは買い揃えられるほど材料費をかけ、しかして出来上がったのが合体事故のスクラップ群なのだから、今のアタシには元気も何も存在しなかった。

「そのメモの中身を全部入れようとしたら、バランスなんかとれませんよ」

 現状の追認をして欲しいわけじゃない。そう言いたくなるけれど、彼女だってケチを付けたくて言ってる訳じゃないだろうから、声にはしなかった。

 いや、彼女の正しい判断を『ケチ付けてる』と一瞬でも評価してしまうアタシは、きっとせっぱ詰まってナーバスになってるんだろう。このままでは、思ってもいないことを口走ってしまいそうだ。

「どうしよう。こう、いい参考になるお店とか無いものだろうか……」

「……無いわけでは、ないかと」

 彼女が手持ちのタブレットに視線を動かした。この行動はアタシが知ってる限り、『調べたから見てください』のサインだ。


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