過去ログ - 少年「ぼくんちに勇者様が一泊した」
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:18:08.78 ID:gNZNa3Oko
ぼくんちは小さな田舎町唯一の宿屋だ。
二階建ての木造建築で、宿屋というよりも民家といった感じ。
これでも暑い季節になると、それなりに観光客がやってきて、満室になることもある。
だけど最近はちっともよそからのお客なんか来やしない。
なんたって魔王が復活しちゃったから、みんな旅行なんかしてる場合じゃないもんね。
おかげで商売あがったり。この町が魔王軍に襲われたことはないけれど、
ずっとこのままなら結局ぼくらは魔王のために滅びることになっちゃう。
ぼくも子供心に不安を感じる中、いいニュースを聞かされた。
勇者様がこの町にやってきたっていうんだ。
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:20:03.96 ID:gNZNa3Oko
町長さんをはじめ、町のみんなは勇者様を歓迎した。
あんまりやりすぎるとプレッシャーをかけることになるんじゃって声もあったけど、
勇者様はみんなの声援にしっかり応えてくれた。
3:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:23:06.14 ID:gNZNa3Oko
ぼくは勇者様はいっぱい戦うからいっぱい食べるんだろうな、と思ってたけど、そんなことはなかった。
サンドイッチをいくつかとサラダを食べ、水を一杯飲んだだけだった。
4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:26:02.78 ID:gNZNa3Oko
夕食を済ませると、勇者様はぼくに色んな話をしてくれた。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:28:49.66 ID:gNZNa3Oko
ぼくは眠れなかった。
お父さんとお母さんからは勇者様は疲れてるから絶対に邪魔しないように、と言われてたけど
どうしてももう少しだけ話を聞きたかった。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:30:49.32 ID:gNZNa3Oko
勇者様は二階の一番奥の部屋にいる。
ぼくは音を立てないようにゆっくりと部屋に近づく。
7:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:32:59.07 ID:gNZNa3Oko
部屋の前に着いた。
勇者様は「もし何かあったら、すぐ私を起こして下さい」とカギをかけてなかった。
それを聞いた時も、ぼくは勇者様ってすごい、と感心した。
8:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:36:26.03 ID:gNZNa3Oko
わずかに開いたドアから、中を見る。
部屋の中は暗かった。
ベッドの布団は盛り上がっていて、勇者様がいることは確認できた。
9:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:38:46.80 ID:gNZNa3Oko
「怖い……怖いよ……」
勇者様の声だった。
10:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:41:33.61 ID:gNZNa3Oko
この時、ぼくが何を思ったか。それは分からないし、覚えてない。
ビックリしたのだろうか、ガッカリしたのだろうか、勇者様も怖がるんだと微笑ましかったのだろうか。
もしかしたら、どれでもなかったのかも。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:45:46.58 ID:gNZNa3Oko
勇者様の表情はひどく頼りなかった。
見られちゃいけない場面を見られてしまった……そういう顔だったのは確かだった。
だけどすぐにいつもの勇者様の顔に戻ってくれた。
12:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:48:29.04 ID:gNZNa3Oko
ぼくは勇者様の手を取り、ぼくんちを出て、すっかり寝静まった町を走った。
勇者様もぼくに付き合ってくれた。
「こっちです、勇者様」
13:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:50:48.67 ID:gNZNa3Oko
町外れにある、二つの大きな岩。ここがぼくの目的地。
岩と岩の間にあるわずかなスペースに、ぼくが木の枝を組み立てて、葉っぱや布切れを屋根にして作った、
小さな隠れ家だった。
14:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:54:16.71 ID:gNZNa3Oko
ぼくは勇者様を中に招き入れた。他人を入れるのは初めてのことだった。
友達にだってこの場所は教えてない。
「ここなら、絶対見つかりません! 食料だってあります!」
15:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 18:57:47.68 ID:gNZNa3Oko
勇者様は笑った。
16:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 19:01:19.16 ID:gNZNa3Oko
「おかげですっごく気持ちが楽になった。
なんたってこんなとっておきの隠れ家を紹介してくれたんだからね」
勇者様は続ける。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 19:04:08.26 ID:gNZNa3Oko
二人でぼくんちに戻る頃には、勇者様は完全に英雄の顔に戻っていた。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 19:06:27.40 ID:gNZNa3Oko
それからというもの、いつ勇者様がやってきてもいいように、ぼくは毎日アジトの掃除をした。
一日も放っておくと、アジトには砂が散らばってるからね。
19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 19:08:17.24 ID:gNZNa3Oko
この町を出た勇者様があれからどうなったのかは、まったく分からなかった。
ぼくの町はただでさえ外の情報が入ってくるのが遅い町だったから、それは当然のことだけど。
20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 19:11:50.23 ID:gNZNa3Oko
勇者様がぼくの町を訪れてから半年が経った。
やっと、ぼくの耳にも勇者様がどうなったのかっていう報せが入ってきた。
21:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 19:16:23.79 ID:gNZNa3Oko
「勇者様が死んだなんて、死んだなんて……っ! ぼく、信じないっ……!」
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