過去ログ - 塩見周子「小日向美穂の嫁入り狂想曲」 -SS速報VIP

過去ログ - 塩見周子「小日向美穂の嫁入り狂想曲」

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1:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:51:40.35 ID:ZwVCh8VR0
　
※　このssにはオリジナル設定やキャラ崩壊が含まれます。

※　長いよ。
　
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

「わたし、お嫁に行きます」

　その一言で、わたしの周りの空気が変わりました。それはそうですよね。だって、結婚ですよ結婚。その辺でお散歩してきますと言うのとは、ワケが違います。
　
「これはこれは……良い返事が聞けて、旦那様もさぞ喜びましょう。では式の日取りが決まり次第、こちらから使いをやりますので」

　正面に座っていた男の人がそう言って、ほっとしたようにため息をつきます。けれど、嬉しそうな男の人とは対照的に、部屋の空気は重く沈んで。
　
　隣に座るお父さんの顔も、酷く辛そうです。でも、これも仕方がありません。
　
「美穂……お前はそれで良いのか？」

「心配しないで下さいお父様。これも家のため……覚悟は出来てます」

　そういって微笑みかけるのが、今のわたしの精一杯。あぁでも、わたしにだって不安が無いわけじゃありません。だって、肝心の私の結婚相手は――。
　

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:52:59.31 ID:ZwVCh8VR0
＝＝＝＝＝

「……狐、ですか？」

　事務所の応接室。ソファーに座ったわたしが、間の抜けた声で聞き返します。

3:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:53:41.30 ID:ZwVCh8VR0
　
「小日向さんにはこの映画の主演の一人……花嫁役を演じて頂けないかと言う話なんです」

「わ、わたしが主演で……お、お嫁さんの役……!?」

4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:54:42.31 ID:ZwVCh8VR0
　
「筋書きとしてはね、昔々、ある大地主の家に狐の使いだと言う男がやって来る」

「何の用かとたずねれば、この家の一人娘を狐の旦那の嫁に貰いたいと答えるじゃないか！」

5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:55:34.42 ID:ZwVCh8VR0

　そこで言葉を切ると、監督さんがニヤリと笑います。

「でも、そう簡単に話は進まない。実は、娘には愛し合っている村の若者がいたんだな。

6:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:56:53.75 ID:ZwVCh8VR0
　
＝＝＝＝＝

「で、結局断っちゃったのーん？」

7:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:57:53.22 ID:ZwVCh8VR0
　
「でもその監督ってさー。映画界でもかなり有名な人だよねー？　ヒット作とかばんばん出してて！」

「お、フレちゃんあの監督さん知ってるの？」

8:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 18:59:21.37 ID:ZwVCh8VR0
　
「美穂殿の花嫁姿……一度、見てみたいものですー」

「そ、そうかなぁ？　絶対変だよ……」

9:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:00:27.79 ID:ZwVCh8VR0

　わたしの隣に座る芳乃ちゃんが、そう言って持っていたお茶をすすります。

　塩見周子、宮本フレデリカ、依田芳乃――三人ともわたしの所属するアイドル事務所のメンバーで、性格も年齢もばらばらなのに、なぜかここに入った時から意気投合。今ではすっかり一緒にいるのが当たり前になっている、仲良し四人組。
　

10:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:01:15.42 ID:ZwVCh8VR0
　
「あー、その気持ちなんとなく分かるかも。美穂ちゃんてさぁ、なんかこう、美味しそうだもんね」

「つまりミホちゃんは、食用の、食べられるミホちゃんだった!?」

11:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:02:19.40 ID:ZwVCh8VR0
　
「周子さん、宮本さん。車の準備が出来たので、降りてきて下さい。そろそろ時間です」

「あ～！　まったプロデューサーが『宮本さん』呼び！」

12:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:03:02.63 ID:ZwVCh8VR0

　そう言ってプロデューサーさんの腕を、周子さんが取ります。その行動に、困った様子で顔をしかめるプロデューサーさん。

「二人ともその辺で止めてあげましょうよ。ほら、プロデューサーさんも困ってますよ」

13:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:03:33.25 ID:ZwVCh8VR0
　
「すみません小日向さん……助かりました」

　そう言って、大きな体を小さくするようにお辞儀するプロデューサーさん。

14:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:04:19.54 ID:ZwVCh8VR0
　
「それにしてもー、いつ見ても大きな御仁でしてー」

「そうですね……初めて会った時は、わたしもびっくりしちゃいました」

15:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:05:20.45 ID:ZwVCh8VR0

「今日からこちらでお世話になる、Ｐと申します。至らぬ点も多々あるとは思いますが、なにとぞよろしくお願いします」

　自己紹介の挨拶の時、余りの威圧感にその場にいた年少組の子が泣き出してしまった光景を、三ヶ月経った今でもまざまざと思い出す事ができちゃいます。
　

16:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:06:05.34 ID:ZwVCh8VR0
　
　でも、そんな第一印象とは裏腹に、新しいプロデューサーさんは優しい人でした。熊さんのような大柄な体に鋭い目つきで誤解されがちでしたが、その実直で素直な性格は程なくして皆の知るとこととなり、今では子供達からも遊び相手になってくれるからと大人気。
　
　とはいえ、少しは慣れてきた今でも、急に後ろに立たれたりしたらびっくりしてしまうのも事実なんですけど。

17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/23(火) 19:06:46.14 ID:ZwVCh8VR0
書き溜め分が終わったので、ここで一旦区切ります。

18:名無しNIPPER[sage]
2016/02/23(火) 19:27:17.66 ID:DR6cGEIZO
乙、期待

19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:41:30.68 ID:hQgddEpx0
＝＝＝＝＝

「それで、小日向さん。先日の映画の件なのですが」

　監督に考えさせて欲しいと返事をしてから二日。

20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:43:38.37 ID:hQgddEpx0

「私個人の意見としては今回の仕事、受けてみる価値があると思っています」

　監督さんから渡された映画の資料に目を通しながら、プロデューサーさんが言います。

21:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:45:40.61 ID:hQgddEpx0

　そうなんです。普通の人なら、そんな凄い人からのオファーを断る理由なんてあるはずがない……でも、私は。
　
「だから、ですよ」

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