過去ログ - 塩見周子「小日向美穂の嫁入り狂想曲」 -SS速報VIP

過去ログ - 塩見周子「小日向美穂の嫁入り狂想曲」

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23:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:47:48.79 ID:hQgddEpx0

　どのくらいそうしていたでしょうか。

やがてプロデューサーさんがため息をつくと、静かにただ一言、わかりましたと呟きました。

24:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:49:27.82 ID:hQgddEpx0
＝＝＝＝＝

　プロデューサーさんと喫茶店で話をしたその日の夜。
　
　事務所の寮に戻ったわたしは、夕食を済ますと自分のベットに転がって、意味もなく天井を眺めていました。

25:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:50:25.15 ID:hQgddEpx0

　地元から上京し、アイドルとして活動を始めてかれこれ二年。
　
　それなりにお仕事もさせてもらっているけど、世間から見たわたしの評価といえば、せいぜい『知ってる人は知っている』程度でしかありません。

26:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:51:34.62 ID:hQgddEpx0

「はぁ……イヤになっちゃうなぁ」

　その時、突然部屋の扉がノックされました。時計を見ると、夜の九時。

27:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:53:21.43 ID:hQgddEpx0
　
「どうしたの、まゆちゃん……こんな時間に」

「ご迷惑かとは思ったんですけど……寮を出る前に、美穂さんに話しておきたい事がありまして」

28:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:54:33.39 ID:hQgddEpx0

「それで……まゆちゃんの話って、なにかな？」

　わたしの問いかけに、まゆちゃんがそっと自分の左手を撫でてから口を開きます。

29:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:55:21.25 ID:hQgddEpx0

　まゆちゃんの言葉に、わたしは数ヶ月前のある騒動の事を思い出しました。
　
　ゴシップ誌に載せられたまゆちゃんのスキャンダル記事と、その直後に起きた彼女の失踪事件――。

30:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 03:56:20.95 ID:hQgddEpx0

　そのままわたしに向かって、座ったままの姿勢でお辞儀をするまゆちゃん。

「あの日記……本当は彼にも見せないつもりだったんです。

31:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:14:32.89 ID:hQgddEpx0
　
「もし、もしもだよ？　あの日記を読んだ事で、まゆちゃんのプロデューサーさんが、その……まゆちゃんを嫌いになってたとしたら」

「今とは真逆の結果になってたら……その時はやっぱり、日記なんて書くんじゃ無かったって……まゆちゃんは後悔するのかな？」

32:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:15:38.86 ID:hQgddEpx0
　
「――まゆはそれでも、日記を読んで貰えたなら、嬉しいって思ったと思いますよ」

　わたしの質問に答えたまゆちゃんは、少し切なそうで……でも、さっぱりとした顔で言います。

33:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:16:52.93 ID:hQgddEpx0

　そこで一旦言葉を切って、まゆちゃんの透明な瞳がわたしを見据えました。
　
「全てが良い方向に行った今だから、私はそう言えるのかもしれません……でも」

34:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:18:01.53 ID:hQgddEpx0

「あのね……実はわたしに、大きなお仕事のお話が来てたんだけど」

「でも、わたしは自分には出来ないって、自信が無いからって、その話を断っちゃって」

35:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:21:24.38 ID:hQgddEpx0

「身勝手な話だよね？　せっかくのチャンスなのに、自分から逃げたっていうのに」

「なのにわたし……今、物凄く後悔してる……なんで断っちゃったんだろうって……」

36:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:23:35.77 ID:hQgddEpx0
　
「……だったらもう、答えは出てんじゃないですか？」

「……ふぇぇ？」

37:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:24:33.20 ID:hQgddEpx0

　ようやくわたしが泣き止んだときには、時計の針もすっかり深夜を指していました。

「あのね……わたし、もう一度プロデューサーさんにお願いしてみようと思うの」

38:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:27:35.12 ID:hQgddEpx0
　
「じゃあそんな美穂さんを、私も応援します。そしてまた何かに悩む事があれば、今日みたいにお話して下さい」

「うん……ごめんね。なんだかわたしの愚痴まで聞かせちゃって……」

39:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:29:07.67 ID:hQgddEpx0
＝＝＝＝＝

「ふー……よおっし！」

　次の日。事務所の扉の前でわたしは自分に気合を入れると、これからの行動を頭の中でシミュレーションします。

40:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:30:05.46 ID:hQgddEpx0

　急にかけられた声に振り向くと、わたしのすぐ後ろにはプロデューサーさんの姿が。
　
　その瞬間、頭の中の計画は全部吹き飛んでしまって。

41:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:31:24.18 ID:hQgddEpx0
　
「ぷ、プロデューサーさん！　実は、お話がありまして！」

「……小日向さん？」

42:名無しNIPPER[saga]
2016/02/24(水) 04:33:41.14 ID:hQgddEpx0
書き溜め分が終わったので、ここで一旦区切ります。

ちなみにまゆの一件というのは前作「Ｐ「まゆの左手首がなんだって？」」の事です
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454736381/

43:名無しNIPPER[sage]
2016/02/24(水) 14:23:47.53 ID:/2f5v+XgO
エキノコックスに気を付けろよ

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