過去ログ - 左衛門佐「温泉とあんこう鍋」おりょう「ぜよ」
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2016/02/25(木) 23:39:35.59 ID:2qJ2+40+0
ガルパン小説です。
左衛門佐とおりょうの二人が主役です。
何事もなく、温泉入ってご飯食べるだけのお話。
そこまで長くないです。さっくり読めると思います。
劇場版の内容にちょっぴり触れます。未見の方はご注意を。
心を込めて書きました。ご覧になってくださると嬉しいです。
少し経ったら始めます。
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2016/02/25(木) 23:43:13.51 ID:2qJ2+40+0
斬りつけるような鋭い寒風が大洗に吹いていた。
茨城内陸と比べれば過ごしやすい気候を持つと言われる大洗だが、さすがに港町だけあって、この季節になると冬の厳しさを肌で味わえるようになる。
街道沿いへ並んで植えられた松の木の足元に、海風に煽られたらしき松毬が散らばっていた。
二月の、その日。
以下略
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2016/02/25(木) 23:45:12.21 ID:2qJ2+40+0
茨城県大洗町は、東京から105km。
町にはヤマトシジミ漁で名高い涸沼川が流れ、これが那珂川と合流し、大洗海岸へと注いでいる。
かつては常陸国鹿島郡に属したもので、大洗の地名の由来は定かではないが、平安時代元慶年間に著された『日本文徳天皇実録』にはすでに「常陸国上言、鹿島郡大洗磯前有神新降」の記述が出現している。
大洗駅を唯一通る鉄道は鹿島臨海鉄道大洗鹿島線。
以下略
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2016/02/25(木) 23:47:03.67 ID:2qJ2+40+0
さて夕暮れ時になり、海沿いの道を歩く一人の少女を見いだすことができる。
左目を閉ざし、右目だけを開けている。
別に目が見えないとか、塵が入ったとかそういうことではない。
ただ趣味でそうしているのである。
以下略
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2016/02/25(木) 23:49:22.66 ID:2qJ2+40+0
時は少し遡る。
艦が帰港し、学校の課業も終わったところで、大洗女子学園生徒会長の角谷杏が戦車道履修者を前にして、
「今日の練習はなーし。せっかく大洗に帰って来たんだし、みんな羽を伸ばしたいっしょ?
うん、じゃあ二月だし、旧正月祝いってことで。解散!」
以下略
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2016/02/25(木) 23:50:59.38 ID:2qJ2+40+0
(かといって、勉強なんてしてみても始まらないなぁ)
おもいきわめて、左衛門佐は方眼紙を引っ張り出した。
方眼紙の上段真ん中に鳥居の絵を描き入れ、その両脇には「はい」と「いいえ」の文字。
その下に「あ」から「ん」までの五十音の文字……。
以下略
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2016/02/25(木) 23:52:31.46 ID:2qJ2+40+0
学園艦の家から自転車を飛ばし、船と大洗港を繋ぐ乗り降り口で船舶科の担当生徒に自転車を預けて、左衛門佐は久方ぶりの大洗の地へ降り立った。
冷え冷えとした、冬の高い空が彼女の頭上へ広がっている。
雲もなく、快晴である。
左衛門佐はゆるゆると、大洗港から南へ向かって歩みを進める。
以下略
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2016/02/25(木) 23:53:43.77 ID:2qJ2+40+0
この温泉は、別名を「温まりの湯」と呼ぶ。
それというのも、この温泉には若干の塩気が含まれており、体についた塩分が汗の蒸発を防ぎ保温の働きをするそうな。
また塩本来の殺菌作用も合わせ、皮膚病や切り傷擦り傷はもちろん、関節や神経、筋肉の鎮痛にも効果を発揮するという。
いつぞやに行われた大洗女子・知波単連合と聖グロリアーナ・プラウダ連合の戦車道エキシビジョンマッチの際にも、試合終了後に生徒たちはこの〔潮騒の湯〕を訪れ、温泉に浸かりながら互いの健闘を讃え、親交を温めている。
以下略
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2016/02/25(木) 23:55:08.68 ID:2qJ2+40+0
〔潮騒の湯〕は太平洋・鹿島灘へと面した大洗海浜公園の南端付近に居を構える。
到着した左衛門佐は玄関をくぐり、左手にある鍵つきの下足箱に靴を収め、番台へ向かった。
〔潮騒の湯〕の入浴料は、平日が800円と、土日が1000円。
しかし、左衛門佐にとっては事情が違う。
以下略
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2016/02/25(木) 23:56:24.71 ID:2qJ2+40+0
がらりと引き戸を開け放つと、そこは湯けむりの支配する別世界であった。
湯けむりというよりは、湯霧といってもいいくらいに、もうもうと立ち込めた湯気によって視界が利かなくなっている。
なにせ、自分の3メートル先が見えない。
かろうじてどの辺りに人がいるというのがわかるだけで、室内の湯船に浸かっている人の顔すらも判別できないほどなのだ。
以下略
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2016/02/25(木) 23:57:48.20 ID:2qJ2+40+0
たっぷりと時間をかけて髪と体を洗い流し、シャワーを止めると、ようやく左衛門佐は湯船へ向かった。
まずは室内の湯船である。
露天はあとのお楽しみにしておかねばならない。
自慢の長髪が湯船に浸かってしまわないよう、左衛門佐はヘアゴムを使い、ハイポニー風にしっかりと纏めて結い上げた。
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2016/02/25(木) 23:59:33.27 ID:2qJ2+40+0
一歩外に進み出ると、もう寒い。
左衛門佐は身震いした。
しかしそれも湯に浸かり直すまでの辛抱であるし、眼前にかくも見事な星景色が広がっているのを見ればさほど気にならない。
そそくさと湯に入ろうとする左衛門佐を見て、すでに露天風呂に浸かっていた先客が驚きの声とともに腰を浮かせ、
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2016/02/26(金) 00:00:55.10 ID:UOumz7aV0
湯の中を泳ぐようにして近づいてきたおりょうへ、左衛門佐が、
「おりょうもここに来てたんだな」
「ああ、ここの湯は天下一ぜよ」
「そうだな…おりょう、今日はどこへ行っていたんだ?」
以下略
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2016/02/26(金) 00:02:39.29 ID:UOumz7aV0
「磯前神社に行ってから、この潮騒の湯まで来たのか?」
「そうぜよ」
「歩いて?」
「うん」
以下略
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2016/02/26(金) 00:04:12.36 ID:UOumz7aV0
おりょうはふにふにと腕を触ってくる左衛門佐から逃げるように遠ざかった。
とはいえ、湯船の中のことなので、そこまで遠くに行けるわけではない。
頬を膨らませたおりょうを見て左衛門佐は左目をつぶりつつ、くすくすと笑った。
壁際に立てかけられた木札に「露天風呂 虫も落ち葉も 皆仲間」の句が添えられている。
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2016/02/26(金) 00:05:33.80 ID:UOumz7aV0
二人は自分の腕に湯を揉み込んだり、足を伸ばしてストレッチしたりしている。
湯の上へぷかりと浮かんだ湯の花を左衛門佐が手にとって、
「ここの湯は塩っ気が強いんだってな」
「なんぜよ、太古の化石海水だっけ?そこの看板にも書いてあるぜよ」
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2016/02/26(金) 00:07:08.51 ID:UOumz7aV0
体についた水滴を拭き取り、替えの服を着て、ドライヤーを使ってじっくりと髪を乾かす。
ここで慌ててはいけない。
時間をかけ、丁寧に丁寧にやってやらないと、髪はすぐに傷んでいってしまう。
満足のいくまで手入れをした後、二人は脱衣所を後にした。
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2016/02/26(金) 00:08:58.16 ID:UOumz7aV0
「一理ある。しかしこういう言葉もあるぞ。『腹が減っては戦はできぬ』」
「む…」
「会長殿も言っていたじゃないか。今日は旧正月だぞ。祝い事ぞ、祭り事ぞ」
「そうだったぜよ。だったら、祝いの席にはそれにふさわしい…『めいんでぃっしゅ』が必要ぜよ?」
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2016/02/26(金) 00:10:24.49 ID:UOumz7aV0
「うわぁ…」
盆に載せられてやってきた御膳を見て、おりょうがくりくりとした丸い両目をさらに丸く見開いた。
「すごいぜよ〜…」
鉄鍋に木蓋をしたものが火にかけてあって、まさにこれがあんこう鍋だろう。
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2016/02/26(金) 00:12:25.78 ID:UOumz7aV0
左衛門佐は烏賊、鯵と食べ進め、味噌汁にも口をつけた。
わかめを具に入れ、昆布と鰹を効かせた熱い味噌汁が彼女の胃の底へ染み渡っていく。
そこで御飯を頬張り、漬物を齧り、また御飯を口に運ぶ。
「こういうことをしているから、いつまで経っても痩せないんぜよ」
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2016/02/26(金) 00:13:54.24 ID:UOumz7aV0
「しからば」
「うむ、ご開帳といくぜよ」
「それっ」
左衛門佐とおりょうの二人は同時に木蓋を取り、同時に嘆息を漏らした。
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