29:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 21:20:17.98 ID:887tizks0
ボタンは全て外されて、上着が軽くはだけさせられている。剥き出しになった鎖骨に真ちゃんの唇が触れると、むず痒いような奇妙な感覚が頭へと駆け上ってくる。真ちゃんの触れる部分がだんだんと顔に近づいていた。たぶん、このまま何もしなかったら頬や…唇も真ちゃんに好きなようにされてしまう。
私は……そんなのは嫌だった。付き合えたらいつかこうなりたいとは思っていたけれど、それはこんな…なし崩しな形じゃない。ちゃんと「好き」って言ってもらって、デートをして……。そういう風に少しずつお互いの距離を縮めていくものだと思っていた。少なくとも、お酒の勢いでいきなり最後の段階から始まってしまうような、そんな恋人の関係は私の思い描いていたものとは全然違う。
今ならまだ間に合う。真ちゃんに声をかけて、止めてもらわなきゃ……。大丈夫、お酒のせいでこんな事をしているだけで、意識がハッキリしたら普段通りの真ちゃんに戻るはず。
……と、不意に耳元で真ちゃんが何かボソボソと喋っているのが聞こえた。
なんだろう?
「……な………る…」
掠れて不鮮明な声。ただの譫言なのかもしれない。意味のある言葉なのかもわからない。
ただ、その時の私は何故か耳を澄ませた。
数秒後、聞き馴染んだ言葉の並びが私の耳に飛び込んできた。
「はる……な」
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