過去ログ - 仁奈「卒業」 -SS速報VIP

過去ログ - 仁奈「卒業」

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2: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:41:59.46 ID:1mwZ3Cl30
こげ茶色の枝に、薄い桃色がぽつぽつと実り始める季節。

10年前のあの日出会った公園の砂場に、彼女は立っていた。

青緑のチェックのスカートに、紺色のブレザー。恐らくだが、彼女が通っていた高校の制服だろう。

以下略

3: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:42:53.36 ID:1mwZ3Cl30
そう言って、仁奈は少し大人びた笑みを見せてくれた。

身長は小柄なままだが、それゆえの愛くるしさも健在だ。

しかしながら彼女が大きく成長したのは、その精神面において。

以下略

4: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:43:47.72 ID:1mwZ3Cl30
「一週間前、卒業式だったんです。それでこの制服を着るのが最後なんだって思ったら、ちょっと勿体無くて。いけないですか？　デートに制服」

と言った後、少し俺から離れて一回転した。

栗色の髪とスカートがふわりと広がり、爽やかな柑橘類の香りが鼻を掠めた。

以下略

5: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:44:55.09 ID:1mwZ3Cl30
「それじゃ、デートに出発しましょう！実はもう、行きたい場所は決まってるんです」

そう言って早足で前を歩きだした彼女に、引きずられるように足をもつれさせてついていく。

最初はどこへ向かうのか検討もつかなかったが、だんだん、だんだんと見た事のある景色に色づいていく。

以下略

6: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:46:17.29 ID:1mwZ3Cl30
「許可は取ってあるのか？」

「今は春休み中で、誰もいないから大丈夫ですよ」

「そういう問題じゃなくて……」

以下略

7: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:49:01.29 ID:1mwZ3Cl30
ああ、ダメだ。なんて、

きっと俺は断れない。

嫌なんだ。仁奈がこんな表情をするのが、仁奈が不安になるのが。

以下略

8: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:50:47.88 ID:1mwZ3Cl30
だけど、

「俺は……」

彼女の、今にも泣き出してしまいそうな、不安そうな顔。

以下略

9: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:51:48.40 ID:1mwZ3Cl30
今回だって、そう。

また保護欲のような何かが口を突いて、

「……わかったよ。見つかったら上手く誤魔化してくれよ？」

以下略

10: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:53:00.55 ID:1mwZ3Cl30
「まずはここですよ！」

俺の腕を引いてまずやってきたのは、手芸部室と書かれた名札が吊り下げられた教室。

確か仁奈は中学、高校と手芸部だったはずだ。

以下略

11: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:54:25.41 ID:1mwZ3Cl30
部室の中はカーテンで閉め切られている上に、窓が開いていないせいか薄暗く息苦しく感じた。

そんな室内の様子に仁奈は少し怒ったようにむっとして、

「使った後はちゃんと影干しをするようにって言ったのに……少し待っててくだせー」

以下略

12: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2016/02/28(日) 19:58:02.89 ID:1mwZ3Cl30
「お待たせしました。今着ぐるみを影干ししてるので、カーテンは閉めたままでも大丈夫ですか？」

「構わないよ」

「よかった……じゃあ改めまして、ここが仁奈が部長をしている、手芸部の部室です」

以下略

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