3:くろひ/DAI
2016/02/29(月) 20:51:27.21 ID:XFAvTUJR0
「ここがゲームの会場か……」
緑豊かで広大で、随所で踊る白い石像達。庭師など見当たらないにも関わらず、そこは一点のくすみもない。端的には超豪華と表現できるそんな庭園の中、その洋館はそびえていた。そして、これまた無駄に大きな玄関の前には、こんな内容の封書を持った少女が一人。
『天海千恵あまみちえ様。
あなたは大金が得られるゲームの参加権を得ることができました。
おめでとうございます。
つきましては、次ページの地図に従いまして、4日後に現地までお越しください』
彼女は、胸元に校章が刻まれたブレザーと少しだけ短くしたスカートをまとっている。そう、誰が見たって学生服である。あまりに大きな館を前に、もともとタレ目気味な彼女だが、さらにタレ加減を大きくしていた。誰が見たって困り顔である。先ほどからドアノブに手を伸ばしたり、ショートかセミロングかその間程度の髪をいじってみたり、そこから動くことはない。本当に、誰が見たって分かりやすいに尽きる少女である。
「おい」
カメもウサギもとっくにゴールに辿りついているような時が流れた頃、その少女、天海千恵あまみちえの背後から声が届く。
「ここにいるってことは、お前もゲーム参加者なんだろ? さっさと入れよ」
「す、すみませんっ……」
その声に、消え入りそうになる返答をしつつ振り返ると、成人を少し過ぎたであろう女性が、腕を組んで仁王立ちしていた。
天海がわずかに身を引くと、その女性は一部の躊躇ちゅうちょもなく館への扉を開ける。呆気にとられた天海の感想は、“すごい格好した人だな”である。全体的に黒い布で身を包むが、腰周りに布がない。上半身だけ見れば、これから海でも行くのかという出で立ちだ。もっとも、下半身は黒のジーンズで包んでいるのでその仮定は即座に否定したいところである。と同時に、女性というより男性に近く、あまりにキリリとした顔に目を奪われもしたのだが。
「あ! 待ってください!」
ようやく周囲1センチにしか届かない声のボリュームをやめた天海は、そんな長い黒髪を揺らす女性についていく他なかった。
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